シャッター商店街を復活させた若者たち!根底にある概念「シビックプライド」とは?
「市民がまちに対して抱く愛着、誇り、自負心」という意味を持つ「シビックプライド」という言葉が、現在盛り上がりを見せています。
18世紀に産業革命を迎えたイギリスにおいて、地方から都市へと移り住んできた人々が抱く“誇り”を、「シビック(市民の)プライド(誇り)」と呼ぶようになりました。現在では、都市再生が行われつつあるヨーロッパ諸国において、シビックプライドは重要なキーワードとなっています。
日本でも「地域活性化」という言葉が度々聞かれますが、このシビックプライドの醸成を軸にした計画は、全国的に展開されています。今回は、その1例を紹介しましょう。
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■新潟市の上古町商店街の例
新潟市の上古町商店街は、駅周辺の新しい市街地と分断されてしまったことや大型ショッピングモールの出店により、衰退の一途を辿っていました。
しかし、若いデザイナーたちが自らのデザインしたグッズを販売する店舗「hickory03travelers」(ヒッコリースリートラベラーズ)をオープンしたのを皮切りに、現在では若手のお店を筆頭にかつての求心力を取り戻し、2009年に約25%だった商店街の空き店舗は、2011年には実に約3%となっています。
編集部では、「ヒッコリースリートラベラーズ」の代表・迫一成さんにお話を伺いました。
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■クリエイター集団・ヒッコリースリートラベラーズの正体とは?
2001年に立ち上がった「ヒッコリースリートラベラーズ(以下:ヒッコリー)」とは、クリエイター集団の名前であり、上古町商店街の一角に立つショップの名前。3人(スリー)で創業したことや、軽やかに夢に向かう旅人という意味で「トラベラーズ」という文言が含まれているそうです。
福岡県出身の迫さんは、新潟の大学を卒業後、仲間とともにオリジナルTシャツ作りを始めます。古町の持つ雰囲気に惹かれたヒッコリーは、やがてそこに店舗を構え、本格的にデザイン活動に注力することとなりました。
手がけたTシャツの数々はどれもポップで、県内外から根強いファンを獲得。さらに、商店街の和菓子屋さんがつくっている“紅白まんじゅう”に餡で愛らしい顔を印刷したプチギフトをデザインしウェディング商品として商品開発を行ったところ、これも大ヒットしました。
商店街のロゴを「作ってみよう」と軽い気持ちでデザインすると、徐々に商店会全体に浸透。若き彼らを受け入れ、そして背中を押し続けた商店街のおおらかさもあり、結果的に公認ロゴとなりました。商店街への愛着が形になった瞬間でした。
「当初は『自分たちのことを発信したい』という意識でした。上古町商店街、そして新潟で活動し続けながら、現在は『デザインを軸に“ここだからできること”を形にして伝えたい』と思っています」
このように語る迫さん。地域のプロダクトに彼ら「らしさ」というエッセンスを加え、「この場所だからできることを大切にしたい」というヒッコリーの信念が合わさることで、いまや古町の代表的な存在になるまでに成長を遂げました。
今後のヒッコリースリートラベラーズはどのような活動をしていくのかと聞くと、「『日常を楽しもう』のコンセプトを大切に、日々精進できるように楽しみます」と意気込みます。良い意味で、現状を“大切に”維持していくということなのですね。
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■「いいね!と言いたいもの」がシビックプライド
上古町の地に誇りと愛着を持ち、現在も活動を続けているヒッコリーの例をはじめとして、「まちづくり」「地域活性化」のもとに活発に活動している人々は現在も増え続けています。
― ヒッコリーにとっての、ひいては迫さんにとっての「シビックプライド」とは何ですか?
「『いいね!』と言いたいものが毎日、そこらへんに散らばっているので、それ全部ですね」
「シビックプライド」や「誇りや愛着」と書くと少し仰々しいかもしれませんが、自分の住んでいる街をよくよく見回してみると、「いいね!と言いたいもの」は実はたくさん散らばっているのかもしれません。
【取材協力】hickory03travelers(ヒッコリースリートラベラーズ)
〒951‐8063 新潟県中央区古町通り3番町556
Tel/fax :025‐228‐5739
営業時間:am11:00 ~pm6:30(定休日:月曜日、祝日の場合は翌日定休日)
※4月3日~19日まで、アートフェスティバル「春山登山展」を開催中。詳細はこちら
(取材・文/しらべぇ編集部・矢野恵美)