「間違った意訳」が生み出すトンデモない誤解【黒田勇樹の妄想的語源しらべぇ】
チラシや広告の文章を、重箱の隅をつつくように読むのが趣味、俳優・ハイパーメディアフリーターの黒田勇樹です。こんにちは。
このコラムでは、子供のころから芸能の世界で台本や台詞に触れ続け、今なお脚本家やライターとして「言葉」と向かい合っている筆者の視点から、様々な「言葉の成り立ち」について好き勝手に調べ、妄想をふくらませていこうと思います。
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■「意訳」のはらむ危険性
みなさま、「意訳」という言葉をご存知でしょうか? 直訳してしまうと意味が分かりづらい文章を、ニュアンスを重視して翻訳することなのですが、映画の字幕などでもよく使われています。
例えば、去年大流行したアナ雪の「レリゴー(Let it go)」、直訳すると「それを行かせて」。
全然、流行りそうにない!
これを、場面や主人公の感情を重視して「ありのままで生きていこう」と訳すのが、いわゆる「意訳」です。
言葉という文化の違いを埋め、アナ雪を大ブームに押し上げたこの「意訳」。しかし、同時に恐ろしい側面も持っています。
翻訳者のさじ加減の影響が大きいので、原作者の意図とまったく違う言葉になってしまう危険性をはらんでいるのです。
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■「ノンケミカルアンチエンジング」→「化学薬品じゃなくて加齢でもない」!?
©iStock/RyanKing999
たとえば、ノンケミカルアンチエイジング。
化粧品の広告で見かけたこの言葉。「化学薬品を使わずに、加齢を防ぐ」といったところでしょうか?
だが、しかし、この「ノン」と「アンチ」を、両方打ち消しの言葉と受け止め「じゃなくて」と訳してしまったらどうでしょう?
「薬品じゃなくて、加齢でもない」
「じゃあ、一体なんなんだ!?」となりませんか?
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■「ノンアルコールビール」→「???」
©iStock/indigolotos
「ノンアルコールビール」は、「アルコールの入っていないビール」ですが、アルコールが入っていない時点でビールと相対するものなので「ノンアルコールアンチビール」と表記しても問題ないでしょう。
そうなったら、もはや「アルコールが入ってなくてビールでもない」と、意訳できてしまいます。
そのようなものが売っていても、消費者は「じゃあ、もうこれなんなんだ!」となってしまいます。
いろいろな言葉で「間違った意訳」をしてみる頭の体操は、外国語や母国語をより深く理解することにつながる…と思うので、どうぞみなさまもお試しください。
(文/ハイパーメディアフリーター・黒田勇樹)