12月だと遅い?インフルエンザ予防接種のベストタイミングは…
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毎年冬になると流行するインフルエンザは、学校や仕事に支障が出るのでできればかかりたくないもの。乗り切るための正しい知識を内科医の筆者がお伝えしましょう。
■「インフルエンザ」と「かぜ症候群」の違いとは?
「インフルエンザ」は、インフルエンザウイルスがひきおこす気道感染症です。
インフルエンザウイルスにはA、B、Cの3型があり、このうちA、B型では流行が問題になります。A型はさらに144種の亜型、B型は2系統にわけられます。
感染すると、1~3日の潜伏期間を経て、38度以上の急な発熱・頭痛・全身のだるさ・筋肉痛・関節痛などが出現し、咳や鼻水が加わります。「かぜ」より重い全身症状がみられ、感染力も強いのが特徴。
かぜの原因ウイルスは200種類以上もありますが、重症化せず短期間で治ることがほとんど。なので、特定する意義はあまりありません。
インフルエンザも通常は1週間ほどで軽快しますが、インフルエンザ脳症やインフルエンザ関連肺炎といった命をおびやかす合併症がみられることもあります。小さい子供や高齢者ではとくに注意が必要なのです。
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■毎年予防接種をしている人は意外と少ない…
ところで、毎年インフルエンザの予防接種を受けているというかたはどのくらいいるのでしょうか? 全国の20代~60代の男女1381名に聞いてみたところ…
結果は23.6 %。ちなみに接種しない人は「未婚者」でより多くみられました。
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■ワクチンは効くの? どんな人が打つべき?
予防接種の目的は、ワクチン接種により特定の病原体に対する免疫を事前に獲得することです。
インフルエンザウイルスはバリエーションが多いので、国立感染症研究所がさまざまな情報をもとに、次シーズンに流行しそうな株のワクチンを選定。
ワクチンが有効かは、実際の流行株との類似性・適合性次第なので、シーズンごとに幅があるのです。
厚生労働省は、インフルエンザワクチンには発症をある程度抑える効果があり、重症化防止にも有効であるという立場です。WHO(世界保健機構)は、妊婦、6ヶ月から5歳までの子供、65歳以上の高齢者、慢性疾患患者、医療従事者について接種を推奨しています。
これまではA型2種、B型1種の3価ワクチンでしたが、2015年/2016年シーズンからは、B型2系統をカバーし4価となり、効果改善が期待されています。
効果が発現するまでは1ヶ月ほどかかるので、本格的に流行する前に打つのがベスト。インフルエンザは毎年12月頃からはやり始め、1、2月頃にピークをむかえます。医療機関では、スタッフやハイリスクな患者さんに対して、11月頃から接種を始めるところが多い印象です。
任意接種の場合は平均3,200円ほどするので、費用対効果のとらえかたにより打つか否か判断がわかれそうです。今回、未婚者より既婚者に毎年打つひとが多かったのは、家庭内感染のリスク低下を考えてかもしれません。
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■それでも、インフルエンザにかかってしまったら…
かぜと同じで、安静・休養・栄養・水分補給が基本ですが、抗ウイルス薬を使うこともあります。
抗インフルエンザウイルス薬はいろいろ出ていますが、効果には大差ありません。ウイルスを殺すのではなく増殖を抑えるだけなので、十分な効果を得るには48時間以内(ウイルス量が最大となる前)に使い始める必要があります。
ほとんどは問題なく自然治癒するので、ハイリスク群をのぞいて抗ウイルス薬を処方しない医師もいます。
また、自分が感染したときは他のひとへうつさない意識が大切です。手洗い、マスク着用はもちろん、部屋の湿度を50~60 %に保ち乾燥をふせぐことも有効です。
「学校保健安全法」ではインフルエンザについて、「発症後5日経過し、かつ解熱後2日経過するまで(幼児では3日)」と出席停止期間を定めています。
社会人の場合、現状明確な決まりはありませんが、基本的にはこれに準じて考えるのがよいと思います。まさに「言うはやすし」ですが…。
(文/しらべぇ編集部・青木マダガスカル)
【調査概要】 方法:インターネットリサーチ「Qzoo」
調査期間:2015年10月23日~2015年10月26日
対象:全国20代~60代 男女1381名