文化財が窃盗被害 住職「盗まれたなんて檀家に言えない」
「檀家が誇りにしている寺の文化財が盗まれたなんて、申し訳なくて言えないよ……。警察に被害届を出すわけにもいかないし、泣き寝入りするしかない」。
寺宝の文化財の窃盗被害を受けた某地方の住職は嘆息しながらこんなことをつぶやいた。
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■寺宝を狙った窃盗、寺院は泣き寝入り
お寺は文化財の宝庫だ。仏像から絵画、古文書などなど歴史的、芸術的価値の高いものが多数眠っている。そのため、寺院をターゲットにした窃盗が相次ぎ、各寺院は寺宝の管理に頭を悩ませている。
文化庁によると、寺院の国宝・重要文化財は155件。都道府県やなど自治体の指定文化財も含めればかなりの数になる。
文化財保護法には重要文化財の管理を怠った場合30万円以下の罰則がある。また盗まれた場合、所有者は10日以内に届け出る義務がある。届け出を怠った場合も罰則が設けられている。
ある寺院は国宝や国指定重要文化財こそないものの、県や市の指定文化財を多数抱えている。この寺の住職は文化財の管理について自治体の教育委員会から「適切な防犯対策をするように」とかなり強く指示を受けているという。
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■重くのしかかる防犯対策
しかし檀家が減少している今日、寺の運営資金は豊富でない。そのため文化財管理の対応まで手が回らず、そこを窃盗犯につけ込まれる。
指定文化財には国や自治体から補助金が出るものの、あくまで文化財そのものに対する補助。防犯対策を万全とするには自己負担なのだ。そして文化財に指定された場合、解除することは難しい。
寺院に代々受け継がれている文化財であれば、所有者である住職の一存という訳にもいかない。寺院は檀家のものという意識が寺院、檀家双方にあるためだ。
このような背景があり、運営が厳しい寺院には文化財の存在が重くのしかかる。
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■盗まれた文化財を見るために海外へ?
骨董商によると、文化財であるゆえに日本での売買が難しく、盗品はもっぱら海外へ流れるという。
仮に被害届を出して犯人が捕まったとしても文化財が戻ってくることはほぼない。
文化財の窃盗事件を捜査した経験がある警察OBは「盗品の経路を追っても足取りが掴めないし、掴んだとしても善意の第三者の手に渡れば取り戻せない」と指摘する。
文化財が、様々な問題の為に人々から奪われている。今回は寺院を例にしたが、問題は他の団体が所有する文化財にとっても同様のことが言えるだろう。
このままでは「日本の文化財を見るために海外まで出掛ける」なんて冗談のようなことが起きるかもしれない。
(取材・文/しらべぇ編集部・伊藤憲二)