猫の譲渡が前年比2倍!攻めに転じた京都の動物愛護センター
動物愛護センター、と言われるとどんなイメージを浮かべるだろうか。暗い雰囲気の施設、殺処分を待つおびえた犬猫たち・・・といった情景がよぎる人も多いだろう。しかし、試行錯誤をしながら転換を図る動物愛護センターが京都にあった。
画像をもっと見る
公園と一体化した、ふらりと行きやすい愛護センター
昨年5月に新しくオープンした京都動物愛護センター本所。京都駅からもアクセス便利な上鳥羽公園内にある。オープンに合わせて、動物愛護活動でも知られる女優・杉本彩が名誉センター長に就任したことでも話題となった。
まず目を引くのが、猫の展示スペース。外からでも猫たちの様子がうかがえるようになっている。この日もスペースにいたモモコちゃんとミルちゃんが、通りがかる人をなごませていた。
↑公園内の施設のため、誰でも見ることができる展示スペース
↑「趣味は人間観察」とでも言いたげなモモコちゃん
↑記者に対して絶妙なツンデレを見せてくれたミルちゃん
↑クールさと甘え心が同居するイケメン、ピエールさん。この直後に卒業(※飼い主が決定)となった。新しいお家で幸せになって欲しい。
公園と一体化しているため開放感があり、家族連れでも訪れやすい雰囲気。土日もオープンしている。1万㎡ある公園は、以前はうっそうとしていたが、センターと同時にリニューアルされた。
↑一般利用も可能なドッグランを併設
↑ドッグラン爆走からの、記者に突進&じゃれつきのコンボを披露してくれたハヤトさん。彼もこの施設に引き取られ、新しい飼主を待つ身だ。
↑入所歴4年というだけあり、お散歩中もどことなく威厳が漂うタロウ先輩
↑施設の屋根にはソーラーパネルが。動物愛護施設としては全国初の地中熱利用システムもあり、これらは動物たちの世話や、災害時に公園が避難場所になった際にも利用される。
関連記事:宅配寿司チェーンが「人力車」や「籠」でデリバリー開始!?取材した結果…
生かす/殺す二択からの脱却を
施設の担当者さんにお話を伺った。
しらべぇ編集部:
ドッグランがあるなど、これまでのイメージを覆すようなたたずまいの施設にみえます。そういったハード面での改革のほかに運営、つまりソフト面ではどのような特徴があるのでしょうか。
京都動物愛護センター 担当課長補佐 南秀明さん(以下、南さん):
京都「府」と「市」、つまり都道府県と政令指定市が共同でセンターを運営しており、これは全国でも初となっています。また、ドッグトレーナーなど外部専門家の監修をもとに、職員としっかり連携をとりながら犬の行動修正(しつけ)にあたって譲渡を促進する「京都方式」であったり,ボランティアとの協働で犬猫の日頃のケアをするなど、内外との連携をとっているのが特徴だといえます。
しらべぇ編集部:
府と市が共同で、ということは二重行政の解消にも繋がるということですね。「京都方式」のメリットをもう少しお聞かせください。
南さん:
これまでセンターにきた犬に対して、譲渡に適するか、あるいは攻撃性などで譲渡に適さない・・・つまり、やむをえず殺処分するかという二択の即断に迫られていました。収容数にも限界があります。
しかし、トレーニングによって譲渡対象に移行できる犬が増えました。移行した動物は飼い主が見つかるまで(殺処分されずに)ここにいることができます。猫たちもボランティアスタッフや職員と接する機会が多くなることで人馴れし、譲渡が成立しやすい一因になっていると思います。
関連記事:Gカップグラドル岸明日香が「焼肉デート」でモテる極意を伝授
関連記事:よその子は別腹?「猫カフェ」に行くのは飼い猫に対する裏切りになるか
積極的なSNS投稿の裏にある思い
ソーシャルメディア担当の職員さんにもお聞きした。
※画像は京都動物愛護センターFacebookページのスクリーンショットです
しらべぇ編集部:
ニッチな分野かと思うのですがFacebookやTwitterですでに1000以上のフォロワーがいますし、投稿すればすぐ100件以上のいいね!がつきますよね。行政としてはやや攻めているというか、いい意味でお役所らしくないフレンドリーさについ読んでしまいます。
京都動物愛護センター 獣医師 河野誠さん(以下、河野さん):
はい、できるだけフランクになるように心がけています。動物たちが必要以上にかわいそうに見えると違うメッセージ性を持ってしまいますし、適度なユーモアさも出したいなと、試行錯誤はしています。
関連記事:怖い?かわいい?原宿にできた猫カフェならぬ「蛇カフェ」に行ってみた
猫の譲渡数が倍増!だが・・・
こういったハード/ソフト両面での改革が功を奏して猫の年間譲渡数、つまり新しい飼い主が見つかる件数が約2倍となったそうだ。これは大きな成果だろう。
しかし、施設へ収容される動物がなくならない限り、殺処分もゼロにはならない。そのため、セミナーや小中学校への出前授業など地道な啓蒙活動も積極的におこなっているとのこと。
取材中、南さんが「そもそも、この施設が不要な世の中になってほしい」と漏らした。動物たちへの愛情を持ちながらその不幸とも直面する葛藤が垣間見え、胸が詰まった。
↑施設の傍にたたずむ供養塔
京都動物愛護センター
〒601-8103 京都市南区上鳥羽仏現寺町11番地 (近鉄京都線十条駅から歩いて約5分)
http://kyoto-ani-love.com/
京都動物愛護センターFacebook
https://www.facebook.com/anilove.kyoto/
京都動物愛護センターTwitter
https://twitter.com/kyotoanilove
(文/しらべぇ編集部・伊東宏之)