お寺に「鳥居」があるのはなぜ?教科書が教えない歴史の謎
鳥居といえば、神社にはつきもの。「ここからが神域ですよ」という印だ。しかし、寺院に詣でたとき、鳥居があって驚くことはないだろうか?
たとえば大阪では四天王寺に、奈良なら生駒聖天(宝山寺)に鳥居を見ることができる。これは、江戸時代までは、神社とお寺が一緒に建てられていることが多かったため。
平安時代に仏教が流行したとき、「日本の神様は、仏様が化身したもの」という思想が生まれた。
「本地垂迹」と言う思想で、たとえば、伊勢神宮に祭られている天照大神(あまてらすおおかみ)は太陽の神様だから太陽と関係の深い大日如来の化身、出雲大社の祭神である大国主命(おおくにぬしのみこと)は「ダイコク」とも読めるから、大黒天の化身といった具合。
つまり、神様も仏様も、もともとは同じものだと考えたわけだ。
■神宮寺と鎮守社
神様も仏さまも同じだから、神社のそばに寺院があることも少なくなかった。そして、神社の附属施設として建てられたお寺を「神宮寺」と呼び、お寺に附属する神社を「鎮守社」と呼ぶ。
探してみると、鐘付き堂のある神社も見つかる。たとえば奈良の高鴨神社にも鐘付き堂があり、大みそかには除夜の鐘が鳴らされている。
ではなぜ、現代のお寺と神社はバラバラなのかというと、それは明治時代に発令された「神仏分離令」のためだ。江戸幕府から政権を奪回した明治政府は、天皇が正当な日本の支配者であると強調するために、日本神道を重要視した。
神道において天皇は「現人神(あらひとがみ)」と呼ばれ、人間の姿をした神様だと考えられている。また、神様の中で最も偉いとされる天照大神(あまてらすおおかみ)は、皇室の祖先とされる。
このような理由で、神様と仏が同じであっては困るのだ。
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■鳥居の意味
しかしなぜ、神社の入口を「鳥居」と呼ぶのだろう。古来日本人は、人の魂は鳥の姿をしていると考えてきたから、「鳥居」は「魂が居る場所」という意味にもなる。
また、鶏は魔を祓うと考えられてきたので、魔物は鳥居をくぐれないと考えられたからだとも言う。
お寺の入口で魔を通さないようににらんでいるものといえば仁王像だが、歴史を考えれば、鳥居があってもおかしくはないわけだ。今度寺院を訪ねるときは、鳥居を探してみてはいかがだろうか。
(文/しらべぇ編集部・上江洲規子)