アカデミー作品賞! 「神父による性的虐待」を暴いた実話映画
衝撃の実話、スリリングすぎます。
2002年1月、アメリカ東部の新聞「ボストン・グローブ」の一面に全米を震撼させる記事が掲載された。地元ボストンの数十人もの神父による、児童への性的虐待を、カトリック教会が組織ぐるみで隠蔽してきた衝撃のスキャンダルだ。
第一面を飾った彼らの記事は、瞬く間に全米に飛び火し、アメリカの宗教史上最大の危機につながる世紀のスクープとなった。
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■性的虐待を繰り返した神父を追う、もうひとつの映画
この実話をもとに製作された映画が、先日開催された第88回アカデミー賞で、作品賞と脚本賞をW受賞した『スポットライト 世紀のスクープ』である。
本作品では、《スポットライト》というコラム担当の記者たちが「ゲーガン事件」と呼ばれる疑惑を追っていく。「ゲーガン事件」とは、地元ボストンのジョン・ゲーガン神父が、30年の間に130人もの児童に性的虐待を加えたとされる事件である。
過去に、同様の事件を扱ったドキュメンタリーが制作されている。2006年に公開された『フロム・イーブル』という映画だ。
この映画では、幼い頃、神父による性的虐待を受けた被害者たちが、自らそのショッキングな体験を語っている。
「彼は僕の頭を押さえつけて、建物の中で男色行為にふけった。」
「思い出したくない…痛みで気を失った。」
「その被害者の子はいくつだった?」「その子はまだ生後9ヶ月だったわ」
彼らの口から凄惨な描写が語られる。この映画に登場する被害者たちは、あるひとりの神父によって虐待を受けていた。映画には、その張本人である元神父自らも出演し、カメラの前で衝撃的な証言を述べている。
「彼女の寝間着をまくりあげた。どうにかして彼女の性器に触れたいと思ったからだ」
「ズボンのボタンを外し、彼のペニスへ手を伸ばした…」
酸鼻極まりない過ちを、どこか淡々とした口調で語る元神父に怖気をふるう。彼は逮捕され悪行が明るみに出るまで、じつに30年にもわたり数百人もの児童に性的虐待を繰り返していた。しかも、教会はその事実を知りながら、法の裁きを巧みにかわしてきたのである。
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■カトリック教会の闇
なぜ、そしてどうやって、教会はこれだけの数の虐待事件を長年にわたり隠蔽してきのだろうか? 『フロム・イーブル』では、ひとつの大きな要因としてカトリック教会の権力構造を指摘する。
10億人を超える信徒を抱え、世界中で絶大な影響力を持つローマンカトリック。その位階制システムは、教皇を頂点とした君主制のような形態になっている。
しかも神がそう定めたとされている。つまり、信者にとって聖職者は、容易には抗えない絶対権力者なのだ。
一方、システムに飲み込まれた聖職者は出世を求め、一度権力を得たら、その権益を死守しようとする。彼らにとって大切なのは、決して平信徒の子供ではない。というかもはや、神ですらない。
長年にわたる虐待の隠蔽は、自分達の立場を脅かすような「厄介ごと」は避けて通りたいという、官僚体質の現れではないだろうか。
『フロム・イーブル』ではこんなくだりがある。
「核戦争からチューインガムまであらゆることに声明を出す教会が、虐待問題では沈黙した」
笑い事ではないが、あまりに滑稽である。
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■スポットライトチームの功績
『スポットライト 世紀のスクープ』では、カトリックの影響力が強いボストンで、記者達が葛藤を抱えながらスキャンダルを追う姿がスリリングに描かれる。
彼らの執念が生んだスクープは、かつてないほど詳細に教会の闇を暴きだし、翌年にはその功績を讃えられピューリッツァー賞を受けた。
アカデミー賞以外にも多くの賞を総なめにし世界中で絶賛されている本作。2016年4月よりTOHOシネマズみゆき座ほか全国にて公開予定である。
『スポットライト世紀のスクープ』
配給:ロングライド
トレーラー:https://www.youtube.com/watch?v=oquYB13OQEI
(文/しらべぇ編集部・Sirabee編集部)