減便ダイヤ改正でも存続 18きっぷで乗りたい「国内最長鈍行」とは
大学や高校が春・夏の休みに入ると、特に地方の列車内でよく見かけるようになるのが「18キッパー」。JR各社の普通列車が5日間乗り放題になる「青春18きっぷ」を愛好する旅行者のことだ。
18キッパーにもさまざまな派閥があるが、とくに「乗り鉄派」が好むのは「長距離鈍行」。なるべく運転区間が長い列車を選び、始発駅で座席を確保すれば、心ゆくまで旅を楽しむことができるからだろう。
ちなみに鈍行は正式な呼び名ではなく、JR各社の案内では「普通」「普通列車」を使う。
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■「国内最長鈍行」は?
現在、定期運転の「鈍行」で最も長い走行距離・所要時間を誇るのは、北海道の根室本線の滝川から釧路まで走る列車。走行距離は308.4キロで、乗り通すと8時間27分かかる。
列車は、滝川を9時36分に1両で発車。釧路までの間でめぼしい駅は「富良野」「帯広」ぐらいでほとんどは小さな駅だ。
10時44分着の富良野からは2両編成になるが、観光客の多くはここで下車。かえって車内は閑散としてくる。冬場に乗ると、難所の狩勝峠を越えて日本海側から太平洋側に出る「新得」(12時51分着)あたりまでは、曇り空に雪が舞う天気になることが多い。
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■峠を越えると車窓が変わる
一転、新得からは晴れ間が広がることも。列車も乗り降りが活発になり、駅ごとに人が乗り込んでくる。乗り込んだ人の大半は14時13分着の帯広で下りてしまうが、代わりに同じくらいの乗車もあって、このあたりは最もにぎわう区間だ。
そういえば「長距離鈍行」は列車の行き違いや特急の追い越し待ちで、いったん駅に止まると10分くらい動かないことがある。中には周りに人家すら見当たらない駅もあり、退屈といえば退屈。そんなときは、ホームに下りて外の空気に触れるといいだろう。気分転換もできて、疲れにくくなる。
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■太平洋ギリギリ区間も
山あいを抜けて太平洋が見えると、16時20分着の「厚内」。ここから先は、波打ち際を走る場所もあって「見どころ」のひとつだ。
この頃になると、再び車内はガラガラ。残った乗客のほとんどが釧路を目指す18キッパーといっていいくらいになる。思い思いに車内の時間を過ごす姿が見られるが、一人旅が目立つのは彼らの特徴。ひたすら車窓に目をやる人が多い。
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■乗ること8時間30分…
夏場は日没が19時頃になるこの地方も、冬場は早いと16時頃に日が沈む。延々と走り続けて8時間。終着駅が近づいてくるが、やはり乗り降りは少ない。街の明かりが急ににぎやかになると釧路。到着時刻は18時3分。朝から晩まで列車の中で過ごしたことになる。
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■「最長鈍行」の先行きは?
JR北海道は、3月26日のダイヤ改正で大なたを振るい、普通列車全体の15%にあたる79本の削減を決めた。この「国内最長鈍行」は削減対象にならなかったものの、区間によっては乗車率がよいとはいえないだけに、先行きが不透明。乗っておくなら今のうちを勧めたい。
(文/しらべぇ編集部・前田昌宏)