動物が人間に憑依する!?一千人が熱狂するタイの寺の儀式「ワット・バンプラ」とは?
以前、しらべぇでも紹介したことがあるタイの刺青、サクヤン。私も昨年11月、左腕にサクヤンを入れ、そのときの模様をしらべぇで記事にした。
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サクヤンとは「護符」を意味し、タイ人にとっては宗教的な意味を持つ神秘的なものだ。そのサクヤンで有名な寺がナコンパトム県の「ワット・バンプラ(วัดบางพระ)」である。
この寺の僧侶たちは、練達した技術でサクヤンを刻むことができるとあり、サクヤンに魅了された者たちが集う寺なのだ。この「ワット・バンプラ」では毎年3月、とある儀式が催され、毎年一千人を超える人々が集まるほど熱気に包まれることでも知られている。
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■ジャーナリストや報道機関が取材に来るほどの儀式とは…
「ワット・バンプラ」の儀式は異様だ。その異様さは報道機関などが取材に来るほどで、初めて見るものに衝撃を与えるだろう。
儀式には、「ワット・バンプラ」でサクヤンを彫った者も多く集まる。トラや猿、鳥などを彫ったものや、仙人など、それぞれによって図柄は異なるが、この儀式に参加すると、彫った図柄が自身に憑依し、同化するのである。
トラを彫った者はトラが、猿を彫ったものは猿が憑依し、奇声を発しながら寺の中心部に向かって突進していくのだ。
このトランス状態は1人2人ではなく、何人にも起こり、多くの者たちが周囲を気にすることなく疾駆していく。そんな彼らを落ち着かせるため、寺の中心部にはボランティア要員が複数名待機。突進する者たちを受け止め、耳の裏を触ることによって落ち着かせるのだ。
■ 彼らは本当に憑依しているのか…
サクヤンには4つの力があると信じられている。一つ目は長寿を導く力。二つ目は危険を回避し身を守る力。三つ目は彫った人の魅力が増し、人徳者になれる力。四つ目は幸運を招く力。
「ワット・バンプラ」へサクヤンを彫るためにやってくるタイ人は、これらサクヤンが持つ力を強く信じている。そのサクヤンへの強い思いがあるからこそ、トランス状態に入れるのではないだろうか。
事実、私がサクヤンを彫ったときも、若者には動物が憑依していたが、私には憑依することはなかった。
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■ 前夜祭から盛り上がっている儀式
後日知ったことだが、儀式の前夜、寺には相当数の者が集まり、多くの僧侶たちによってサクヤンが彫られていた。これは毎年恒例だそうだ。この夜、寺の外では大音量で音楽が流れ、盛り上がり、まさに前夜祭といった様子で、参加した者たちはそのまま屋外で就寝し、当日の儀式を迎える者も少なくなかったという。
前夜にサクヤンを彫り、儀式に参加してトランス状態に陥る人も多かったのだろう。「ワット・バンプラ」で行われた儀式は、朝9時から始まり、およそ1時間弱で終了した。
来年は前夜祭から参加し、私もその場でサクヤンを彫ってもらおうと思う。
(取材・文/しらべぇ海外支部・西尾康晴)