ホームレスが売る雑誌『ビッグイシュー日本版』に取材して分かった貧困の実情
ホームレスの自立支援のための活動を精力的に行っている。
■ホームレスになるにはさまざまな背景が
そこで、有限会社ビッグイシュー日本東京事務所の販売サポート・広報担当の長崎さんにもお話を聞いてみると、ホームレスになってしまう背景にはさまざまな理由があるのだという。
まず挙げられるのが「年齢や健康上の理由などから、仕事につけないこと」。親の介護やリーマンショック、病気やけがなどで職を失い、再就職をしようとしてもできず収入源を失うことはホームレス状態に至る大きな理由の一つだ。
また「頼れる身寄りがないこと」もあげられる。DVなどで家庭内に居場所がない、仕事で借金を負った、などさまざまな理由で、頼れる身寄りがない人も多いという。
中には、相続などをきっかけに親族から失踪宣告の手続きがすすめられたために知らないうちに戸籍上はこの世に存在しない状態になってしまっていた人もいたそうだ。
これだけでも驚きだが、さらに驚いたのは「障害を抱えているにも関わらず、本人も周囲も気づかず、必要なサポートを得られないまま大人になり、生計をたてられずホームレス状態に至る人」もいること。
困窮家庭で育って親族に余裕がなかった、障害者福祉に対する周囲の理解が不十分であったなど、なんらかの事情で親族や周囲の人から、障害者福祉につながるための必要なサポートを得られずに育った人も少なくないという。
上野さんもそうだったが、自分に「障害」があると気づかずに仕事をしてきて、うまくいかないことが度重なるうちに、ホームレス状態になってしまうこともあるのだとか。
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■その他の支援
そういったさまざまな理由でホームレスになった人がビッグイシューの販売者となり、自立への道を歩んでいくそうだが、ビッグイシューではそれ以外の支援活動も行っていると長崎さんは話す。
その他の活動としてはビッグイシュー日本設立から4年後に設立された認定NPO法人『ビッグイシュー基金』では、市民からの寄付を元に、ホームレスの方が自立するための仕事以外のさまざまなサポートをしている。
寄付の方法はさまざまあるが、寄付されたお金はそのまま被支援者に渡るのではなく、自立するための活動に使われる。
たとえば販売者の上野さんがビッグイシューを知るきっかけになった小冊子『路上脱出ガイド』の製作配布費や、ホームレスの方の健康診断をはじめとした自立支援活動費、他支援団体とのネットワークづくりや政策提案等の活動費など。
また、ホームレスの方が集まってフットサルや野球などのスポーツを行い、人間関係を作り自立への心の準備を促す自主的なクラブ活動の応援のためにも使われる。
面白いところではリオ五輪にあわせて開かれた貧困問題のアートでの解決を目指す世界各国の団体の交流会にも招待されたというダンスチーム『ソケリッサ!』の活動もある。
記者が取材に訪れた当日は、一般社団法人アオキカクにてソケリッサ!を主催するアオキ裕キさんも事務所に訪れていた。