AV業界の問題は「現場の中からの変化」を 川奈まり子・青山薫教授が激論
昨年から注目を集める「AV出演強要問題」について、神戸大学・青山薫教授とAVAN代表の元女優・川奈まり子氏が対談。
■「ヒモ」や騙しの問題も
川奈:スカウトの取り締まり強化に対して業界側からの反発は起きづらいと思います。IPPAの理事会で私がスカウトや騙しの問題を話すと、どの理事も「その通りですよね」と言います。「問題ですよね」と。 同じことをプロダクションの人に話しても、「嫌がる子は帰している」と言われますから。
騙して出演させる出演強要は、みんな避けたいと思っているんです。 それとは別に、プロダクションとスカウトの問題で、いちばん闇が深いと私が思うのは、「紹介手数料」の話。 スカウトが女の子をプロダクションに連れてくるとき、スカウト=紹介者に手数料が払われます。
一括で払うのを「買い切り」と呼び、私のときはそのパターン。 10年ちょっと前まではだいたいみんな買い切りでしたが、最近は女の子が出演するたびに紹介者がバックマージンをもらうのがスタンダードになりつつあります。
青山:女の子がAVに出ている限りは、スカウトにはヒモみたいにお金が入る?
川奈:ええ。だから、このシステムはメーカーには、とても評判が悪いんです。
青山:女の子が辞めづらくなる?
川奈:それに、紹介者が彼氏やヒモだったりする場合も珍しくないそうなので、そうなると女優の本当の意思を確認することも難しくなる。女優が何か言っても、本当は紹介者にそう言わされているだけかもしれないと疑いたくなるじゃありませんか。
プロダクションにとってもそれは困るだろうと思ったのですが、「プロダクション側で『紹介料は一括で』と決めたらどうか」と提案したところ、「ルール破りをするプロダクションがあったら、そちらにスカウトマンが流れてしまう」といった声がありました。
また、「紹介者が後ろについている女の子のほうが、美人で質が高い」という見方もあって……これはもう、ちょっとお手上げだと思いました。 香西咲さんやほしのあすかさんなどに共通するのは、芸能界で活躍していた女の子を、紹介者が騙してAV業界に入れたという点です。
そういう事態を業界側が止められるような形をつくらないと。
青山:騙しは強要の発端です。そして「騙し」(詐欺や欺罔)や「強要」や「性的搾取」という言葉を使うことは、政策決定者や人権団体としては必要なんです。
さっき性的搾取や暴力に対する政策に盛り込まれていると言った人身取引対策は、国連の「人身取引禁止議定書」に基づいていますが、この議定書が、性的に搾取するために騙したり強要したりすることは人身取引だと定めている。
そして人身取引対策は国連だけでなくアメリカにも求められており、日本政府としても実施する――少なくともポーズをとる――必要がある。予算もつく。AV業界が今後も続いていくためには、この辺のことも意識したほうがいいと思います。
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■明文化された業界ルールが必要
川奈:私はアメリカのポルノ団体のように、自主的に守っていく明文化されたルールを業界でつくるといいと思います。合法的に安心に働けるAV業界がないと、女優もAVメーカーも困ってしまう。
改革委員会の働きに期待したいところですが、当面は、メーカーが女優を直接雇用するのは難しいですから、プロダクションは女優から業務委託契約を受けるなどして、騙しに荷担しないように、しっかりするべきです。
青山:マネージメントを委託するんですね?
川奈:ええ。女優からプロダクションにマネジメントを委託すればいいんですよ。 誰かにマネジメントしてもらえることは、女優にとってはありがたいことなんです。とくに専業で忙しく出演する売れっ子にとっては。
私は現役の頃、一気に人気が出たので、マネージメントの大切さはすごくよく実感しています。 仕事を持ってきてくれて、スケジュール管理をしてくれて、1日に何個も仕事を入れて飛び回るようなことは、ひとりではできません。
青山:忙しい芸能人ですよね。
川奈:また、AV出演は、性にまつわる業務だけに、「雇用」という指揮命令系統が存在する働き方にはそぐわないとも思います。 女優さんが自由に裁量できる範囲を増やしておきたい。
雇用であれば、「断ったら首になっちゃう」ということにもなりかねません。だから、女優はフリーか個人事業主で、必要があればプロダクションと契約するのがいいと思うんです。