福士蒼汰『愛ある』はなぜこんなにイライラする? 脚本に詳しい人に聞いた
ホラーテイストなサスペンスとして注目を集める福士蒼汰主演ドラマ『愛してたって、秘密はある』。遅々としたストーリー展開がさすがにしんどくなる視聴者も…。
③回想シーンやモノローグが多すぎる
「父親殺しの過去を持ち、それが影響して法曹の世界に飛び込んだ黎は、自身の犯した罪をたびたび見つめ直します。しかし、それの回数が多いんですよね……。
たしかに、ドラマは心理描写も大切。ですが、それは面白いストーリーあってこそ。とくにサスペンスはそうでしょう。観ている側としては『それはもういいからもっと色んなことが起きてくれ』と思ってしまいます」
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④ちょくちょく「いい感じの台詞」を入れてくるが響かない
「『秘密と恋って似てるね。隠したくても隠しきれないところ』『誰かと一緒に生きてくってことには、リスクがあんだよ』など、本作では各登場人物が作品のテーマに絡むような台詞をちょくちょく放ちます。字面だけ見るととてもいい感じの台詞で、そうだよなあ…と思う人もいるでしょう。
でも、ここで伝えておきたいのは『いい感じの台詞』と『いい台詞』は似て非なるもの、ということ。気の利いたことや深いことを無理に言う必要はないし、観ている人がそれで感動するわけでもない。むしろ、何気ない言葉でも心が大きく動くこともある。
しかし、そのためには色んな前置きが大事です。たとえば、坂元裕二脚本『カルテット』。数々の名台詞が話題になった名作ですが、真紀がすずめに語った『泣きながらご飯食べたことある人は生きていけます』のような、明らかな名台詞ばかりではないんです。
たとえば、第一話で真紀が『人生には三つの坂があるあるんですって。上り坂、下り坂、まさか』と話し、たとえまさかであっても、起きてしまったことはもう元に戻せないと伝えるシーンがあります。
『上り坂、下り坂、まさか』なんて、冷静に考えれば結婚式のスピーチにおける3つの袋の話くらいありきたりな表現ですし、たぶんこれまでに使った人もいるだろうけど、坂元氏が天才なのはその前に伏線を敷いていること。しかも、『唐揚げにレモンをかけるか』というくだらない会話で(笑)
こうすることで、一見手垢にまみれた言葉がイキイキとしてきます。いい感じの台詞を書こうとする脚本家は多いですが、本当に優秀な人は『普通の言葉を使っているんだけど、前置きやエピソードの組み立て方が上手いから心に染みる』という台詞の書き方ができます。
長くなりましたが、そういう意味では前置きや伏線の不足が否めませんよね。いきなり出てきたキャラがそれっぽいことを言う、というか……それぞれに印象的な過去があるわけでもなさそうで、単に恋心による嫉妬って感じですし」
■脚本家はイライラ作品が得意?
最後に、氏は次のように話した。
「しかし、ドラマ好きな人にとってはこのようなイライラ傾向はある意味納得かもしれません。というのも、本作で脚本を担当する桑村さや香氏は『恋仲』『好きな人がいること』(フジテレビ系)などを執筆した人だからです。両方とも放送中から『イライラする』という感想が絶えなかった作品ですよね。
ここまでくると、もはや彼女の味なのかな……と個人的には思ったり、思わなかったり」
氏の意見はあくまで個人の感想に過ぎないものの、納得できる人も多いのではないか。
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(文/しらべぇ編集部・Sirabee編集部)