宮藤官九郎『監獄のお姫さま』がただ面白いだけじゃない理由
マニアをうならせる一方で、その切れ味するどいジェンダー的な視点にも注目の『監獄のお姫さま』。『逃げ恥』『カルテット』に続くTBS火10枠の代表作に?
■伊勢谷友介は演じる板橋吾郎は「男」の抽象化
第4話、上記のようなジェンダー的な試みを端的に示したような演出が登場した。板橋役の伊勢谷が、回想シーンで他の男性キャラを演じていたことだ。
たとえば「姐御」の場合は彼女を慕う舎弟(若えの)であり、「財テク」こと勝田千夏は幼い頃の父親役で伊勢谷が登場。この後、収監された千夏に父親は会いに来るのだが、そのときはちゃんと別の俳優(ベンガル)が演じていた。
普通に作るのであれば、ベンガルが若作りするだけで十分なはずなのだ。しかし、本作では「男なる生き物を抽象化した存在」として伊勢谷が演じる。
こうすることで女囚たちが「姫」に感情移入していく様子がよりわかりやすく描かれると同時に、「ひとりの不幸な女のために、元女囚の女たちが代わりに復讐を果たす」という、痛快なエンタメ性以外の深みを獲得することに成功しているのだ。
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■ネット上でもジェンダー的意見相次ぐ
さらに、TBS系22時は近年乗りに乗っている枠である。
契約結婚という題材を通じ、現代人の多様な生き方を描いた『逃げるは恥だが役に立つ』、後戻りできない人生という旅の中で、お互いの欠点を「ドーナツの穴」のように不可欠な一部として慈しみながら共同体を作る姿を描いた『カルテット』、シングルマザーが格闘する姿を通じて厳しい現実を訴えた『カンナさーん!』……
などなど傑作揃いだが、それだけでなくどれもが「現代を生きる人々に対する現実的かつ、温かい目線」というテーマ性を感じさせるのだ。
その流れを意識したのかどうでないのかは不明だが、『監獄』も同じようにネット上ではさまざまな意見、議論が毎週生まれている。
馬場カヨに長年のストレスをぶつけられる夫役、姐御を慕う舎弟役、勝田千夏の父親役だったりする伊勢谷友介は、このドラマの中で、夫や父という「男なるものを抽象化した存在」としての機能も負わされている。#監獄のお姫さま
— カルヴァドス (@cornelius0321) November 7, 2017
出てくる男性みんな上から目線の話し方をするんだよね。おばさんというか女をバカにしてる。これは全女たちの復讐の話なんだろうな。 #監獄のお姫さま
— 竹元勇子🦈(教授)(dolcevita) (@yutakemoto) November 7, 2017
「監獄のお姫さま」、めっちゃ面白い。女性たちの連帯(と、もちろん、そこにある一筋縄ではいかない複雑さ)や、抑圧主体としての男性たちの振る舞いを、コミカルかつ多層的に描く。
男たちがホモソーシャルで戯れている間に、女たちは様々なものを背負わされ続けている。男の自分にも、自覚は、ある。— コメカ (@comecaML) November 8, 2017
https://twitter.com/diehuty13/status/928434747302330369
#監獄のお姫さま
「問題のあるレストラン」が悪意ある男達VS女とすると、「監獄のお姫さま」は言葉の責任をとらない男達VS女、だろうか…。冷静にの夫は単なるひがみ男だけど。時間が前後しながらパズルみたいに「そうゆうことか」が続いて次回が気になりすぎる。あと所長がいろいろおかしくて大好き— さえ (@32416) November 8, 2017
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■今夜の『監獄』はおばさんたちが育児!?
今夜、第5話の放送を迎える『監獄』。公式サイトであらすじをチェックすると……
板橋吾郎 (伊勢谷友介) が行方不明になってから3時間が経過しようとしていた。そんな中、弁護士が動画サイトで吾郎の姿を発見する。それは、カヨ (小泉今日子)たちが “爆笑ヨーグルト姫事件” の裁判やり直しを要求するため、吾郎に文面を読ませたものだった。再審の難しさを訴える検事の 長谷川 (塚本高史)に 若井 (満島ひかり)は食って掛かる。
いっぽう2012年・女子刑務所では…若井から、しのぶ (夏帆)の出産と 悠里 (猫背椿)の仮釈放決定の知らせを受け、カヨたちは喜びと寂しさを同時に味わっていた。
そんな中、美容資格取得のガイダンスが行われる。カヨは受刑期間が長いので可能だったが、受刑期間が短く受講を諦めた 洋子 (坂井真紀) と 明美 (森下愛子) は、しのぶの子供のため、ベビーシッターに興味をもつ。また、担当は唯一美容免許を持つ若井が美容担当を兼務することに。カヨは、そこで若井が美容師の資格を取得したいきさつを知る。
そして、ついに刑務所に赤ちゃん (勇介)を連れたしのぶが戻ってくる。所内で子育て、今までにないケースに迷う 護摩所長 (池田成志)…。おばさんたちはしのぶと勇介を守れるのか… !?
面白い、でもそれだけじゃない『監獄のお姫さま』。一回目は笑いながら、二回目は考えさせられながら観てみるのはいかがだろうか。
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(文/しらべぇドラマ班・クレソン佐藤)