「白紙の勤務表」で労基署の査察をパス 従業員を苦しめるブラック企業のトンデモ手口

休憩時間も休日も、健康診断もないのに労働基準監督署の査察はパス!?

2018/06/08 10:00


レストラン
(Koji_Ishii/iStock/Thinkstock/画像はイメージです)

「昨日、徹夜でさ…」「最近、出張続きで…」といったエピソードが、SNSなどでの忙しさ自慢で済んでいるうちはまだいい。世の中には、とんでもないブラック企業で働いている人たちがいる。

GPSを使って残業時間の証拠を自動で記録できるスマホアプリ『残業証拠レコーダー』を開発した日本リーガルネットワーク社に寄せられた体験談の中からひとつ紹介しよう。



■一族経営のブラック企業

サイドBさんが勤務していたのは、一族経営のオーナーカンパニーだ。

「8年間在籍していた会社でした。怠け者で高給取りで幹部の息子たちがいる、典型的な一族経営です。新店舗オープンに伴い、自分が店長として店を任されました。9時から8時までの拘束で休憩なし。


『お客さんが来ない時間が休憩時間だから』と息子たちに言われ、社長は見て見ぬ振り。その状態で2ヶ月間休みなく働きましたね」


店舗に立っていながら「お客さんが来ていない時間は休憩時間」と言われてしまうと、実際の休みなどほぼ取れなくなってしまうだろう。


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■労基署の査察が入ったものの…

ほぼ休憩なしで1日11時間勤務、2ヶ月間休日もなしという異常な勤務環境。当然そのままでは済まなかったようだが…

「勤務表は手書きのものだったので『週40時間で書いといて』と命ぜられ、言われるがまま提出していました。その後、経緯は不明ですが、労基の監査が入りました。過去何年分かについて、従業員全員分の勤務表を提出するよう求められたようです。


しかし管理不足により紛失。その際従業員たちに『勤務表を過去数年分、名前と印鑑だけ押して提出』という命令が出ました。そして全員分の勤務表を社長、幹部たちで都合良く記入し、改ざん。提出したようです。


『いや、全員分のは大変だったんだよ!』と、なぜか社長が私たちに愚痴っていました」


「こんなやり方で査察をパスすることができるのか!」と思う人もいるだろう。その会社のブラックぶりはさらに続く。

「あと、健康診断は会社の義務のはずですが、従業員全員、在籍中に受けたことがありません。もみ消されていたのでしょうか?」


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■弁護士の見解は…

南谷泰史弁護士

こうした先輩や上司の発言、会社の文化に法的な問題はないのだろうか。鎧橋総合法律事務所の南谷泰史弁護士に聞いたところ…

南谷弁護士:この短い話の中で、非常に多くの労働関係法令の違反が認められます。


「9時から8時までの拘束で休憩なし」の点は、労働時間の上限(1日8時間)を定める労働基準法(労基法)32条1項と、休憩時間の付与(8時間を超えて働く場合には1時間以上)を定める労基法34条1項に違反します。


なお、休憩時間とは従業員が自由に利用できる時間を指す(同条3項)ため、お客さんが来たらすぐに対応しなければならないような時間は休憩時間としてカウントされません。また、2ヶ月休みがなかった点は、毎週1日以上の休日の付与を定める労基法35条1項に違反します。


嘘の労働時間を記入させていた点も違法性を指摘する。

南谷弁護士:次に、労働の実態と異なる週40時間労働を勤務表に手書きさせていた点については、解釈上認められている労働時間の適正管理義務に違反します。残業代の未払いは、労基法37条1項違反です。


これらの労基法違反には、6ヶ月以上の懲役又は30万円以下の罰金が罰則として定められています(労基法119条1項)。


さらに、労働時間が記載された賃金台帳の保存義務(労基法109条)の違反も認められます。労働基準監督署に虚偽の報告をした点は、労基法120条4号に該当し、罰則として30万円以下の罰金が定められています。


あまりの違法行為オンパレードに、南谷弁護士の怒りは止まらない。

南谷弁護士:最後に、健康診断を実施していない点は、労働安全衛生法66条1項違反です。法令順守意識が全くない典型的なブラック企業と言っていいでしょう。


このような企業にはしっかりと罰則を科して、一刻も早く社会から退場してもらうべきだと思います。


こうしたブラック企業エピソードは6月10日まで募集中だ。

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(取材・文/しらべぇ編集部・タカハシマコト 取材協力/日本リーガルネットワーク

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