裁判になった「地下アイドル界の闇」を演劇に 弁護士がプロデュースする『脱獄女子』に注目
アイドルグループ・虹色fanふぁーれメンバーと所属していた事務所との裁判が和解に。悩みやパワハラの様子を自ら演じる。
■事務所・アイドルは実質的な「労働契約」
事務所を辞めたら芸能活動を続けられないと思っていた彼女たちの契約書を、河西弁護士は仔細に分析した。
河西弁護士:契約書に書かれているすべてが有効とは限らず、独占禁止法や労働法規、公序良俗に反するような条項は無効となります。たとえば、労働者であれば、賃金をレッスン料と相殺することは認められません。
芸能事務所とアイドルの場合、指揮監督関係があることから、業務委託契約であってもほとんどの場合は労働契約と認定されます。
また、その年齢における年収相場と比較して賃金が十分に支払われていない状態にも関わらず、長期の契約で縛ることは認められません。地下アイドルとしてはかなり多い水準と言える年100万円の契約でも、裁判所に即時解約が認められたケースもあります。
また、「契約終了後の活動禁止」についても、一般的には認められないという。
河西弁護士:今年2月、公正取引委員会が「独占禁止法の保護範囲に芸能契約が含まれる」旨の報告書を出しています。移籍を制限するために退所後の活動を禁止するのは独禁法違反の恐れがあり、活動禁止期間中の対価を支払うのでなければ、禁止を強制することはできません。
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■リアルな舞台に大きな反響
言葉乃は、「本当に伝えたいメッセージを脚本に書いていただきました。ラストシーンは、自然と涙が出ちゃう」と語る。春野次は、演じながら、当時の記憶がフラッシュバックしてしまうこともある。「これがよく現実だったな、よく耐えられたなと思います」と振り返った。
また、今回の舞台は朝日新聞に取り上げられるなど、大きな反響があったと河西弁護士はいう。
河西弁護士:出演者がすごく有名なわけではないのに注目していただいているのは、実際に元原告の地下アイドルが演じる、というリアリティと、裁判が和解した直後というタイミングもあると思います。
テレビで話題になる芸能トラブル以上に苦しんでいる地下アイドルたちが今もいて、この問題をわかりやすい形で取り上げるのは、今しかないんじゃないかと考えました。
また、芸能人は「裁判を起こしたイメージ」がつくと、なかなか活動が難しくなります。だから、和解後すぐに活躍する場を用意してあげたいな、と。
■もう一度アイドルをやりたい
パワハラを受け、裁判にまで至った芸能の世界。無事和解できたとはいえ見たくない裏側も見てしまった彼女たちだが、今も前向きだ。
言葉乃は、「悩んでいるときに自分が救われたのは歌だった。『これが自分のやりたいことだ』と再確認できたので、できることなら、もう一度ちゃんとアイドルをやりたい」と語る。
ステージで感じるファンとの一体感は、経験者しかわからない楽しさであり、「みんなが悩みながらもステージに立ちたいのもわかる」という。
しかし一方で、その魅力が奴隷的な契約に若い女性たちを縛り付ける一因になっているのかもしれない。喜びも悲しみもどちらも体験したアイドルたちが演じるリアルなストーリーは、気になるところだ。今回の公演は15日まで行われる。
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