骨折しても「松葉杖使うな」と立ち仕事を強要 ブラック保育施設の恐るべき実態とは
民間経営の保育所も増えているが、中には保育士に過度の負担を強いる職場も。
■会社側の業務内容における配慮の欠如
早野弁護士:前述した食物アレルギーの件と同様に、不慮の事故により骨折してしまったNさんに対する会社側の対応には強い疑問を禁じえません。Nさんの骨折が業務上の事故なのかについては、明らかではありません。
仮に私的な事故によるものであったとしても、骨折によって労務の提供が困難となっている以上、休職させるべきですし、仮に休職制度がなかったとしても会社側の一定の配慮は必要であったと言えるでしょう。
他方、業務上の事故であったならば、当然休職を認めた上で、会社側が療養費用を負担し、休業補償もしなければなりません(労基法75~77条)。
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■主治医に禁止された働き方を強いられて治癒が長期化
早野弁護士:Nさんは骨折の痛みに耐えながら勤務していたのに、「いつになったら治るんだ、遅すぎだ」との発言や、「保護者の前では松葉杖を使わずに行動しろ」などの心ない発言によって、精神的にも追い込まれてしまいました。
会社側の、Nさんの健康をまったく顧みず、かつ、精神的に追い込む姿勢は許されるものではありません。
こうした経緯により、Nさんは、結果的に骨折の治療期間が長期化したり、精神的な疾患に陥り休職したということですので、会社側に安全配慮義務違反の責任を問える可能性は高いでしょう。
保育士不足による現場へのしわ寄せについても、早野弁護士は警鐘を鳴らす。
早野弁護士:政府としても、保育士不足に対応するために、設置基準の緩和や、保育士試験を年に1回から2回に増加するなどの対応をしています。
しかしながら、まだまだ保育士不足は解消されておらず、Nさんが体験したように現場へのしわ寄せが起きているものと推察できます。この点は、今後も社会的な問題として考えていく必要がありそうです。
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(取材・文/しらべぇ編集部・タカハシマコト 取材協力/日本リーガルネットワーク)