映画『ワンピースFILM RED』が二度と作れない完成度 その“幻想性”を考察
ワンピース映画『FILM RED』のヒット要因を考察。幻想性、歌と映画のこの上ない融合、赤髪海賊団と「家族」に注目する。
■虚構か現実か
同作品の大きな注目テーマには、「幻想性」もあるだろう。ウタが提示する「新時代」は、「幻想性」や「虚構性」に溢れるもの。
同作品は、ウタの生き方の是非も問われる作品だ。人々にあまり理解されていない、ちょうど同時期の作品『家庭教師のトラコ』(日本テレビ系)と比較したい。寅子は、7歳で母親に捨てられる。
育ての親から十分な愛情を受けずに育つことが、人格形成に大きな影響を及ぼすことは、社会哲学者アクセル・ホネットも認めるところ。同作品は、たとえそれでも地に足つけて、身近な愛を感じながら生きられることをゴールとしたもの。
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■幻想的な『FILM RED』
寅子の地に足つかない革命思想も、ウタの一発逆転的な「新時代」思想も両者の魅力であるものの、必ずしも肯定できない部分も描写している。しかし、『FILM RED』自体、終始幻想的な世界観を持っており、だからこそSNS上には同作品に活力をもらうとの声がある。
同作品は、肉体がなくとも意思さえ残ればよいという思想にも一定の評価を与えている。同作品は、虚構性に対して肯定してもいるのだ。なお、ウタの破滅性や儚さ、ルフィに終始負けない姿勢も非常に魅力的である。