世界一かわいいゲシュタルト崩壊、日本で発見される 4歳息子が生み出したのは…
4歳の幼い我が子が書いたひらがなの「る」が奇妙な進化を遂げていき…。微笑ましい光景に注目が集まっていたのだ。
■「文字のプロ」の考察が鋭すぎる…!
次男4歳の「る」が迷走しててとてもかわいい pic.twitter.com/BoV7GBxfUp
— うみうし (@u_mi__u_shi) September 4, 2022
今回話題となったドリルだが、こちらは元々うみうしさんの長男(6歳)のために用意していたものに次男が興味を示し、自発的に取り組んだものである。
本人も学習の過程で「る」が奇妙な進化を遂げてしまった自覚があったのか、「あれれ?」と首を傾げながら鉛筆を握っている様子を受け、うみうしさんも破顔しつつ「頑張ってできた!」と声をかけたというから、じつに微笑ましい。
なお、石井氏は普段から「書」に関する出来事にアンテナを張っており、件のツイートも取材を受ける前から既にチェック済みであったとのことで「授業の題材として取り上げようかとも考えていたところです」というコメントも得られたのだ。
そこでまず、率直に件の「る」を見た際の感想を尋ねると、石井氏からは「ああ、やっちゃってるなぁ(笑)という印象を受けました」という笑顔のコメントが。
うみうしさんの子供がどのようにひらがなを書き取ったのか、細部は不明であるが、石井氏は「恐らく、赤色で左側に大きく書かれたお手本ではなく、自身が直前に書いた上にある『る』をお手本として、書き取りを続けたのではないでしょうか」と予想している。
これは言うなれば、元の情報が徐々に変貌していく「伝言ゲーム」のようなもので、こちらの形式での書き取りが続いた結果「最終マスの『る』は『結び』の方向が、本来の右回りでなく左回りになってしまったのではないか」というのが石井氏の考察であった。
また前提として、学校教育(小学校)における漢字の学習は、文部科学省の定めた「学年別漢字配当表」に基準となる字体・字形が示されている一方、ひらがなとカタカタにはこちらの「配当表」に相当するものが存在しないというのだ。
そのため、学習教材によって微妙にお手本の文字の形状が異なる点も、ひらがなに慣れ親しんでいない子供を混乱させる一因なのかもしれない。
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■「難しいひらがな」に思わず納得
そもそも「ひらがなの難易度」はどのように定義されるのだろうか。真っ先に「画数」(ひらがなの場合、筆数)が思い浮かんだ人が多いことと思うが、今回話題の「る」は1筆にも関わらず、かなり難易度の高い文字である。
石井氏はこちらの疑問に対し、「ひらがなは19種類の『単一方向』、10種類の『回り』、2種類の『結び』、4種類の『折れ』といった様々な線を組み合わせ、できあがっています」と前置きしつつ、「ひらがなを書く際に、構成する線の要素が少なければ比較的簡単に書くことができ、構成する要素が多くなると難しくなる、ということが言えるのではないでしょうか」と、持論を展開。
例えば「く」「し」「つ」「へ」などは1筆のひらがなであり、且つ文字を構成する線の要素が同じ1筆の「る」と比べると極端に少なく、実際これらは比較的簡単に書くことができる。
一方で「る」を線で見ていくと1.浅い折れ、2.浅い折れ、3.右回り、4.結び、という4つの要素で成り立っており、石井氏は「細かく見ていけば合計で6つもの線の要素が含まれているため、こちらのお子さんは苦戦したものと考えられます」「特にこのお子さんの場合、2回目の『浅い折れ』とそれに続く右回りの楕円、そして最後に書く平たい三角形の『結び』の部分に苦戦されているということがよく分かります」とも分析していたのだ。
なお石井氏が「最難関」と認識しているひらがなは「む」と「を」のツートップだそうで、「これは外国人留学生の書くひらがなを見ても、同様の傾向が見て取れます」というコメントが得られたのが興味深い。
「を」の場合は、2筆目の角度や浅い折り返し後の曲線の形、および2筆目と3筆目の位置関係、さらに「3筆目をどの辺りから書き始めれば良いのか」などを意識する必要があるそうで、これまで無意識に書いていたひらがな1つとっても、様々な要素が複雑に絡み合っていることが実感された。
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■上手に「る」を書くコツは?
ちなみに我々が現代でも使用しているひらがなのルーツは「万葉がな」と呼ばれる文字で、こちらは仮名が発達する平安時代より以前、奈良時代を中心に用いられたもの。漢字の意味は文字に関係なく、漢字の音・訓をかりて和語を書き表す表記法である。
例えば「あ」の字源は「安」、「か」であれば「加」といったように面影が残っている文字もあるが…石井氏から「る」の元の形が「留」であると説明された際は、そのイメチェンぶりに思わずツッコミを入れてしまった。いくら何でも変わりすぎだと感じるのは、記者だけだろうか…。
取材の最後に「丁寧に『る』を書く練習法」を尋ねると、石井氏は「慣れるまではゆっくり書くことが大切です」と前置き。そして「2回登場する『浅い折れ』の角度には特に注意し、2回目の『浅い折れ』の後に書く『右回り』はまん丸でなく、丸を上下に潰した楕円の形を意識しましょう」「最後の『結び』も、まん丸に書くのでなく、平たい三角形になるよう書くと、形が整うと思います」と、実演を交えつつ回答してくれたのだ。
またひらがなを書く際、特に2筆目以降を前筆から離れた位置に書く場合では「筆脈」と呼ばれる「毛筆での書き方に起因する自然な繋がり」を意識することが重要となるため、幼児期から毛筆に親しんだり、毛筆の学習に取り組むことは、ひらがなの上達に一定の効果があると考えられるそう。
今後いかに世の中の電子化が進もうと、日本語の基礎「ひらがなを書く」という行為は、我われ日本人から切っても切り離せないものである。次にペンを握る際はぜひ、一文字一文字に思いを込めてひらがなを書いてみてほしい。
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(取材・文/Sirabee 編集部・秋山 はじめ)