W杯開催国カタールの光と影… 人権や環境問題などで批判される背景に「文明の衝突」
中東初のW杯開催で一気に盛り上がるカタール。その水面下では相容れない文明同士のぶつかり合いが。
Sirabeeでは、風雲急を告げる国際政治や紛争などのリアルや展望について、舛添要一(ますぞえよういち)さんが解説する連載コラム【国際政治の表と裏】を公開しています。
今週は、いま世界中の注目を集めるワールドカップの舞台「カタール」がテーマです。
■酷暑のカタールで開催
11月20日からカタールでサッカーのワールドカップ(W杯)が始まった。中東での開催は史上初である。世界中のサッカーファンが、白熱した試合に大興奮し、その結果に一喜一憂する。まさにスポーツの醍醐味である。
カタールは秋田県くらいの面積しかない小国であるが、石油や天然ガスに恵まれ、豊かな国になっている。地理的には赤道近くにあるため夏は50℃にも及ぶ酷暑である。私も砂漠のこの熱射を体験したが、とても耐えられるものではない。
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■脱石油を目指すアラブ産油国
サウジアラビア、アラブ首長国連邦(UAE)、クウェート、カタール、オマーンなどアラブの産油国は、石油や天然ガスが枯渇したときに、それに代わる産業として観光立国を考えている。
私は、競馬を通じてUAEのドバイと親密な関係を保っているが、ゴルフコースを造ったり、競馬のW杯を開催したり、豪華なホテルを建設したりして、一大リゾート地としての発展を図っている。カタールが、各種のスポーツイベントを誘致しているのも同じ目的からである。
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■カタール人は人口の1割
カタールの人口は約280万人であるが、その9割は外国人であり、建設現場をはじめ様々な分野で働いている。カタールは石油生産量で世界15位であり、天然ガスでは6位である。しかし、天然ガス埋蔵量では、ロシア、イランに続いて第3位である。
その輸出で稼いだ金を国作りに注ぎ込んでおり、特に2010年に2022W杯の招致が決定して以来、会場建設などのためにインド、パキスタン、バングラデッシュ、ネパール、スリランカなどから外国人労働者が流入してきた。
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■人権や環境の問題が浮上
灼熱のカタールで、戸外での土木作業は過酷である。イギリスのガーディアン紙によれば、2010年から10年間で外国人労働者6,751人が死亡したという。低賃金で非人間的な労働条件で働かせており、それは人権問題だとヨーロッパの先進国は非難している。
また、LGBTQを認めていないことも、人権に反するという声が高まっている。労働条件については、カタール当局は改善したと反論している。また、LGBTQについては、同性愛はイスラム教の教えでは認めないことになっている。
さらには、屋根のないスタジアムに強力な冷房を効かせるため、大量の温室効果ガスを排出することになる。その点を、環境活動家は問題にしている。