防衛予算の増額、重要視すべきは数字ではなく「防衛政策」「防衛構想」にあり
【国際政治の表と裏】防衛費増額、来年度から5年間で43兆円の予算が使われる。日本の自衛隊の実力はどうなっているのか。
2月24日にロシアがウクライナに侵攻し、戦争は続いている。また、北朝鮮は異常な頻度でミサイルの発射実験を行っている。さらには、中国が台湾を武力統一するのではないかという観測も強まっている。
日本を取り巻く国際情勢がこのように厳しくなるのに伴い、岸田文雄首相は今後5年間(2023年度〜27年度)の防衛費を43兆円とすることを決めた。この決定について、財源などをめぐって自民党内でも激しい議論が起こっている。
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■国民も過半数が賛成
憲法9条を持つ日本の国民は、強力な軍隊を持つことを躊躇してきた。ところが、この世界情勢の変化を前にして、防衛予算を増額することに賛成する人が過半数を超えるようになった。
12月2〜4日に行われた読売新聞の世論調査では、賛成が51%、反対が42%である。3、4日のJNNの世論調査でも、賛成が53%、反対が36%となっている。9〜11日のNHKの世論調査では、賛成が51%、反対が36%である。
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■かつては「GNPの1%以内」という政治的制約
第2次大戦で敗戦国となった日本は、二度と戦争をしないという決意の下、自衛のためのみに武力を保有するという方針を貫いてきた。そのため、防衛費も低く抑えるということで、1976年11月に三木内閣が「GNPの1%以内」という枠を設けたのである。
しかし、国際情勢の変化に伴い、1986年12月に中曽根内閣がこの枠を撤廃したが、その後も、ほぼ1%の水準を保ってきた。
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■日本は世界第5位の軍事大国
日本は経済大国であり、GDPは今や550兆円である。この1%は5.5兆円であり、毎年この支出を続けているうちに、日本の防衛力は着実に強化された。
“2022 Military Strength Ranking by Global Firepower”によると、2022年の世界軍事力ランキングは、1位アメリカ、2位ロシア、3位中国、4位インド、5位日本となっている。以下、6位フランス、7位イギリス、8位韓国、9位パキスタン、10位ブラジルである。
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■日本もNATO並みに「GDPの2%」に
NATOは加盟国に対し、軍事費をGDPの2%以上にすることを求めており、2021年には全30加盟国中11カ国がその目標に到達している。自民党は、日本の防衛費もこの水準にすることを公約にしており、その公約を実現するように、岸田首相が「今後5年間で43兆円」という数字を出したのである。
43兆円を単純に5で割れば、1年間で8.6兆円ということである。初年度から急増させるわけには行かないので、4、5年目にはGDPの2%、つまり11兆円近くになることが想定される。