防衛予算の増額、重要視すべきは数字ではなく「防衛政策」「防衛構想」にあり

【国際政治の表と裏】防衛費増額、来年度から5年間で43兆円の予算が使われる。日本の自衛隊の実力はどうなっているのか。

2022/12/16 06:00


 

■新しい安全保障戦略

重要なのは防衛費の数字ではなく、どのような防衛政策、防衛構想を立案するのかということである。

12月12日、自民党と公明党は「安全保障3文書」を決めた。第一が「国家安全保障戦略」で、これは外交・防衛の基本方針である。第二が「国家防衛戦略」(旧「防衛経過の大綱」)で、これは日本の防衛力整備の指針である。第三が「防衛力整備計画」(旧「中期防衛力整備計画」)で、具体的な装備品の整備の規模、防衛費の総額を規定したものである。


関連記事:岸田文雄首相の防衛増税を内山信二が猛批判 「政治家の給料カットを」

 

■具体的な変化

では今回の防衛政策はどこが新しいのか。第一の文書では、中国が脅威であることを強調し、「これまでにない最大の戦略的な挑戦」とした。第二の文書では、敵のミサイル発射基地などを攻撃する「反撃能力」を保有することを明記した。

第三の文書では、防衛費43兆円の内訳として、敵の射程圏外から攻撃できる「スタンド・オフ能力」に5兆円、航空機・艦船などの装備品の維持・整備に9兆円、新たな装備品の確保に6兆円などが計上されている。

具体的には、たとえば国産のミサイル「12式地対艦誘導弾」の改良型や高速滑空弾の開発、アメリカの巡航ミサイル「トマホーク」の取得などがあげられている。


関連記事:バイデン米大統領がまた台湾防衛に「Yes」 本当に信じることができるのか

 

■様々な問題点

以上のような政府・与党の方針で、迫り来る脅威に対抗できるのか。逆に、これまでの専守防衛という方針を逸脱して、反撃能力の行使が先制攻撃とみなされないか。多くの問題点が浮かび上がってくる。

国会でこれらの点をじっくりと議論して、最適な防衛戦略を構築すべきである。防衛は、単にお金をかければ良いというものではない。日本国の安全を確保し、本人の生命と財産を守るという目的の実現が肝要である。


関連記事:堀江貴文氏、増額する防衛費の使い道に私見 「宇宙に使わなきゃいけない」

 

■執筆者プロフィール

舛添要一

Sirabeeでは、風雲急を告げる国際政治や紛争などのリアルや展望について、元厚生労働大臣・前東京都知事で政治学者の舛添要一(ますぞえよういち)さんが解説する連載コラム【国際政治の表と裏】を毎週公開しています。

今週は、日本を取り巻く国際情勢と防衛政策をテーマにお届けしました。

・合わせて読みたい→バイデン米大統領がまた台湾防衛に「Yes」 本当に信じることができるのか

(文/舛添要一

舛添要一新刊『スターリンの正体 ~ヒトラーより残虐な男~』【Amazon】

自衛隊舛添要一防衛岸田文雄国際政治の表と裏
シェア ツイート 送る アプリで読む

人気記事ランキング