2023年「世界経済」の展望は暗い 戦争、コロナ、インフレが日本経済にも影響
【舛添要一『国際政治の表と裏』】IMFは先進国における2023年の経済成長率が「低下する」と予想している。日本はどうなるか。
■インフレの猛威
世界のインフレ率は、2021年の4.7%から2022年には8.8%に上昇するというのがIMFの予測である。そして、2023年は6.5%、2024年には4.1%に減速するとされている。
欧米は物価高に悩んでいる。アメリカは、昨年10月のインフレ率が7.7%と高く、11月は7.1%である。このようなインフレを抑えるために、アメリカの中央銀行FRBは金利を引き上げ、それが円安を生んだ。低金利の日本と金利差が拡大したためである。11月は7.1%に低下したため、金融引き締めを緩め、今は円安が少し是正されている。
イギリスでは昨年10月のインフレ率が11.1%と10%を超え、40年ぶりの高水準となっている。そのため、医療関係者、鉄道員などが賃上げを求めてストを行い混乱している。
ドイツでも、12月のインフレ率は9.6%と高く、2022年全体では8.7%であった。
関連記事:今度はインドが“ロシア離れ”か… 進む孤立にプーチン氏の動向を考察
■日本の景気
日本でも、昨年10月のインフレ率が3.7%と高くなった。諸物価の高騰は国民の生活を困難にさせている。問題は賃金が上昇していないことである。先進国の中で賃金よりも物価が上がっている状態が25年も続いているのは日本のみである。岸田内閣は財界にも協力を求めて、賃上げに重点を置いた経済政策を展開すべきである。
日本人は長い間デフレのみを経験してきたが、インフレの怖さもまた警戒せねばならない。物価が2%程度の上昇、賃金がそれ以上の上昇というのがベストなのであり、岸田政権はそこに目標を設定すべきである。
関連記事:2022年世界平和と国際経済を破壊したプーチンの大罪 来年はどう出る?
■執筆者プロフィール
Sirabeeでは、風雲急を告げる国際政治や紛争などのリアルや展望について、元厚生労働大臣・前東京都知事で政治学者の舛添要一(ますぞえよういち)さんが解説する連載コラム【国際政治の表と裏】を毎週公開しています。
今週は、「2023年の世界経済展望」をテーマにお届けしました。
・合わせて読みたい→2022年世界平和と国際経済を破壊したプーチンの大罪 来年はどう出る?
(文/舛添要一)