終わらないウクライナ戦争、核ミサイル開発 「第二次世界大戦の遺物」国連は機能しているか?

【舛添要一『国際政治の表と裏』】ロシア、北朝鮮の暴走が止まらない。国連は機能不全に陥っている。その現状と過去の歴史を辿る。

2023/04/23 05:30

国連本部(米ニューヨーク)

ウクライナ戦争や北朝鮮の核ミサイル開発に関して、国連が機能不全に陥っている。

ウクライナ戦争では、ロシアが侵略国であるが、そのロシアを非難する決議案は、国連安保理でいつも否決される。それは、当のロシアが常任理事国であり、拒否権を行使するからである。

【関連記事】舛添要一氏連載『国際政治の表と裏』、前回の記事を読む



 

■北朝鮮、ウクライナで無力な国連

国連決議に違反してミサイル実験を繰り返す北朝鮮に対して、制裁を強化するアメリカの国連安保理決議案が提出されたが、2022年5月26日、13カ国が賛成したものの、中国とロシアが拒否権を行使したために否決された。

2017年のときは、中国もロシアも北朝鮮のミサイル実験を批判したが、今回はそのような態度を示さなかったのである。国連の機能不全が問題になっているが、金正恩はウクライナ戦争がもたらした対立図式をうまく利用しているのである。


関連記事:第3次世界大戦の震源地は… ヨーロッパだけではなく北東アジアの可能性も

 

■歴史を見ると戦争が世界秩序を変えている

世界の歴史を振り返ってみると、戦争をきっかけに国際秩序が変化している。たとえば、16世紀には、ポルトガルが世界の覇権国(世界一の国)として大航海時代を演出し、「地理上の発見」をもたらした。そして、このポルトガルのヘゲモニー(覇権)に対抗し、それに挑戦したのがスペインである。

1580年には、ポルトガルはスペインに吸収される。しかし、熱心なカトリック教徒であったスペインのフェリペ2世が自国領内の新教徒を弾圧したため、当時スペイン領であったオランダが1568年に独立戦争を起こし、遂に1581年には独立を宣言する。

エリザベス1世治下のイギリスがオランダを援助し、1588年にはイギリス海軍がスペインの無敵艦隊に勝利する。こうして、1609年にはオランダとスペインの間で休戦が成立し、それ以降、覇権国の地位がオランダに取って代わられる。

このように「世界一の国」が交代するのは、ほぼ100年の周期である。そして、約30年続く戦争がトップ交代のきっかけとなる。


関連記事:まもなく1年迎えるウクライナ戦争 米軍がウクライナ介入できないワケ

 

■第二次世界大戦後の世界

第一次世界大戦(1914〜1918年)と第二次世界大戦(1939年〜1945年)を合わせて考えると、約30年戦争である。その結果、覇権国がイギリスからアメリカに代わった。

第二次世界大戦の勝者は連合国のアメリカ、ソ連、イギリス、フランス、中国であり、敗戦国は枢軸国の日本、ドイツ、イタリアである。
そして、勝者の連合国が作ったのが国際連合(United Nations)である。直訳すれば「連合した国々」である。敗戦国は、敵国として除外されている。敗戦国が国連に加盟したのは、イタリアが1955年、日本が1956年、東西両ドイツが1973年である。

勝者5大国は、国連安全保障理事会の常任理事国となり、拒否権を持つ。1国でも反対すると、決議は成立しない。

さらに、勝者5大国は、すべて核兵器を保有している。敗者の日独伊は核兵器の保有を禁じられている。また、この3カ国には、米軍の基地がある。米軍基地は、ロシアや中国に対抗するのが目的であるが、旧敗戦国の日本やドイツやイタリアが再び軍事大国にならないように、「ビンの中に封じ込める」ためである。これを「ビンの蓋論」という。

1945年に戦争が終わって78年も経つ。しかし、その当時の世界秩序が今なお続いている。それが、国連の機能不全にも繋がっているのである。ウクライナ戦争の停戦も、北朝鮮の核ミサイル開発の中止も、国連にはできないというのが現状なのである。


関連記事:泥沼状態のウクライナ戦争 停戦の鍵握るのは軍事、政治、経済の「限界」

 

■日本はどうするか

日本は、今や国連加盟国であり、今年は安保理の非常任理事国という重要な役割を担っている。国連外交に努力するのは、当然であるが、国連以外の国際組織も活用することが重要である。

たとえば、主要先進国首脳会議(サミット、G7)がそうである。フランス、アメリカ、イギリス、ドイツ、日本、イタリア、カナダ、EUが参加する。今年は、日本の広島で開催される。G7では、敗戦国日本は、戦勝国のアメリカやフランスやイギリスと対等な地位にある。

またG20(金融・世界経済に関する首脳会議)は、G7にアルゼンチン、オーストラリア、ブラジル、中国、インド、インドネシア、メキシコ、韓国、ロシア、サウジアラビア、南アフリカ、トルコが加わった組織である。ここでも、第二次世界大戦の勝敗は関係ない。

このような新たな国際組織を活用して、第二次世界大戦の遺物である国連の機能不全を補わなければならない。


関連記事:防衛予算の増額、重要視すべきは数字ではなく「防衛政策」「防衛構想」にあり

■執筆者プロフィール

舛添要一

Sirabeeでは、風雲急を告げる国際政治や紛争などのリアルや展望について、元厚生労働大臣・前東京都知事で政治学者の舛添要一(ますぞえよういち)さんが解説する連載コラム【国際政治の表と裏】を毎週公開しています。

今週は、「国連」をテーマにお届けしました。

・合わせて読みたい→泥沼状態のウクライナ戦争 停戦の鍵握るのは軍事、政治、経済の「限界」

(文・舛添要一

舛添要一氏新著『スターリンの正体 ~ヒトラーより残虐な男~』【Amazon】

舛添要一ウクライナ戦争国際政治の表と裏
シェア ツイート 送る アプリで読む


人気記事ランキング