「Z世代」に最も親しまれる「X世代歌謡」は? 永ちゃん、サザン、達郎、ユーミン…

『スージー鈴木のニッポンの民意』第6回は、前回に続いて「Z世代」分析。今回は音楽の視点から斬り込みます。それも「X世代」が若い頃、リアルタイムで聴いたヒット曲の視点から――。

2023/05/14 05:15

矢沢永吉・桑田佳祐(サザンオールスターズ)

前回から続いて「Z世代」ネタです。このパワーワードに対して今回は、音楽評論家である私の本丸、音楽ネタで攻め込みたいと思います。いえいえ、「Z世代ブーム」に乗った便乗商法ではありません。決して。

かくいう私は「Z」ではなく「X世代」に分類されるようです。ただ、こちらの定義もかなり曖昧なのですが、様々な情報を総合すると、私(56歳)は「X世代」の最長老ポジションにいて、逆に40歳前後の方も、その中に入るみたい。何と大ざっぱなことでしょう。

というわけで今回は、「Z世代が親しんでいるX世代歌謡」というテーマでお届けします。現在の「X世代」……てか、私が「Z世代」くらい若かった頃にヒットした曲に対して、現在の「Z世代」がどれだけ親しんでいるのかを、データに基づいて分析したいと思います。

私が勝手に選んだ候補曲は、この10曲(リリース順)。

・矢沢永吉『時間よ止まれ』(78年)

・サザンオールスターズ『勝手にシンドバッド』(78年)

・山下達郎『RIDE ON TIME』(80年)

・大滝詠一『君は天然色』(81年)

・松山千春『長い夜』(81年)

・松任谷由実『守ってあげたい』(81年)

・佐野元春『SOMEDAY』(81年)

・中島みゆき『悪女』(81年)

・安全地帯『ワインレッドの心』(83年)

・井上陽水『いっそセレナーデ』(84年)


ちょっと「81年物」が多くなりました。余談ですが、私はしばしば思うのです。「80年代は81年からだった」と。だって、『君は天然色』『長い夜』『守ってあげたい』『SOMEDAY(ただしシングル)』『悪女』が全部81年で、その上、この年の元日に『ビートたけしのオールナイトニッポン』が始まっているのですから。

で、これら10曲それぞれに対して、以下の選択肢を1つ選んでもらいました。

1.歌うことができる

2.歌えないが聴いたことはある

3.聴いたことはないが曲名を知っている

4.知らない


今回は、これら選択肢の「1」と「2」を足し上げたもの、つまり「聴いたことがある」割合でランキングを作成しました。あ、肝心の「Z世代」の定義は、ざっくり「10~20代」としています。こちらも大ざっぱですいません。

ちょうど10曲なのでベストテン形式で。ではまず、9位から4位を一気に。


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■ユーミンと大滝詠一が健闘した4~9位

Z世代が親しんでいるX世代歌謡

ユーミン強いですね。これは思ったより高水準です。ライバル・中島みゆきに差を付けました。広くカバーされているのが要因でしょうか。なお選択肢「1.歌うことができる」だけで言えば、全体10曲中2位という高水準(7.4%)。

あと『君は天然色』も5位と健闘しました。大滝詠一という存在が、若年層でも伝説化しつつあることの反映でしょう。

逆に、井上陽水『いっそセレナーデ』は、「Z世代」的には、少々大人っぽ過ぎたのかもしれません。8位の松山千春『長い夜』も、あの『ザ・ベストテン』のあの映像を見ないと、長期記憶には入らないのかも。あの……そう、81年7月2日に放送された「テニスボールの足裏蹴り映像」(「X世代」の最長老付近限定ネタ)。


関連記事:Z世代にコロナ世代、ロックダウン世代… 若者を表すワード「○○世代」と認識のズレ

 

■「永遠の歌怪獣」がベスト3進出、逆に永ちゃんは…

では、いよいよベスト3。3位と2位。

Z世代が親しんでいるX世代歌謡

回答率が2割を超えた3位と2位は「永遠の歌怪獣」の登場です。2位は「Z世代」における「シティポップ」ブームを反映しているのかもしれません。あのCMのあの映像を見た私には、感慨深い結果です。あの……そう、80年に放送された「山下達郎本人が海に浸かって指鉄砲を撃つマクセルのCM」(再び「X世代」最長老付近限定)。

ここで10位、つまりは最下位を。

Z世代が親しんでいるX世代歌謡

矢沢永吉『時間よ止まれ』。リリースから45年も経っていることが影響したのでしょうか。しかし、1位に輝く曲もリリースから45年も経っているのです。


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■圧倒的1位は、リリースから45年も経ったこの曲!

Z世代が親しんでいるX世代歌謡

サザンオールスターズ『勝手にシンドバッド』。回答率は『RIDE ON TIME』の倍以上で5割を超えています。つまり「Z世代」の半分以上が聴いたことがあるという、驚異的な数値と言えましょう。

こうなったら、『勝手にシンドバッド』はもう、一種の「国民歌」にしてもいいのではないでしょうか。例えば、プロ野球の試合前とか、学校の入学式とかで全員が歌うような。でも、例えば小学生が「胸さわぎの腰つき」「シャイなハートにルージュの色がただ浮かぶ」なんて意味不明なフレーズを斉唱するなんてありえないか(いや、本音では面白いと思っています)。

ちなみに「非Z世代」=30代以上でのランキングはこちら。

Z世代が親しんでいるX世代歌謡

さすがに全体の水準が跳ね上がりますが、それでも『勝手にシンドバッド』はさすが国民歌。世代を超えていますね。逆に『君は天然色』は最下位。大滝詠一の伝説化は、「Z世代」限定なのかも。ちなみに、選択肢「1.歌うことができる」だけで見れば『ワインレッドの心』がトップになります(44.3%)。

というわけで、お分かりの通り「Z世代」ブームの便乗商法を、前回に続けて2回、お届けしました。さて、次回は何に便乗しようかしらん。


関連記事:「Z世代」は18歳から24歳、「高齢者」は70歳から 民意で決める「世代ワード」の年齢幅

 

■執筆者プロフィール

スージー鈴木

Sirabeeでは、音楽評論家、ラジオDJのスージー鈴木(すーじーすずき)さんの連載コラム【スージー鈴木のニッポンの民意】を公開しています。


毎回マーケットリサーチを実施し、そこから浮き彫りになる「ニッポンの民意」を世に問いていく連載です。今回は「Z世代が親しんでいるX世代歌謡」に関する調査を掲載しました。

・合わせて読みたい→「Z世代」は18歳から24歳、「高齢者」は70歳から 民意で決める「世代ワード」の年齢幅

(取材・文/スージー鈴木

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方法:インターネットリサーチ
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