日本人はこの1年で約80万人減少… 国の活力維持するためには「移民」の選択肢も
【舛添要一『国際政治の表と裏』】毎年約80万人もの人口が減る日本。一方で在日外国人は増加している。国を維持するため「移民」に頼る時代が来てしまうのか。
■ヨーロッパに見る移民問題の深刻さ
ヨーロッパでは、第二次大戦後の高度成長期に、労働力不足を補うために外国人労働者を大量に受け入れた。それで人手不足の解消にはなったが、社会に亀裂を生む大きな問題も生じた。イスラム教の信仰や風習がキリスト教社会と異なり、それが偏見や差別を生んだ。そして、不況になると、外国人労働者がまず犠牲となって失業し、犯罪に走ったりした。テロも多発した。
今や、戦後直ぐに到来した移民の2世、3世が活動する時代となっている。彼らは、生まれ育ったヨーロッパと父祖の生活習慣との間で「アイデンティティーの危機」に悩んでいる。まさに文化摩擦、文明の衝突である。
私は、若い頃に留学したヨーロッパでこの移民問題に直面し、関心を持ってこのテーマを追ってきたが、2世、3世、そして4世の登場で、事態は複雑になっている。
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■ウクライナ戦争が問題を悪化させている
昨年2月以来のウクライナ戦争で、ヨーロッパの人々は物価高に悩み、多くの不満が高まっている。そして、その不満は移民に向けられ、移民排斥をうたう極右政党が台頭している。また、差別された移民がテロに走るという事態にもなっている。
6月27日に、アルジェリア系移民2世の少年が検問中の警察官による発砲で死亡したが、これに抗議する人々がフランス全土で抗議活動を起こした。一部は暴徒化し、放火、破壊行為、商店の略奪などで、多くの被害が出た。暴徒の多くは移民とその子弟であった。
日本が移民を大量に受け入れた場合、好況の時は問題が起こらなくても、不況になると、ヨーロッパと同じような事態になる可能性がある。そのリスクをいかに回避するのか。外国人労働者の日本への定着には越えなければならないハードルが多々ある。しかし、日本が今後も活力を維持していくためには、移民という選択肢を真剣に考える必要があるのではなかろうか。
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■執筆者プロフィール
Sirabeeでは、風雲急を告げる国際政治や紛争などのリアルや展望について、元厚生労働大臣・前東京都知事で政治学者の舛添要一(ますぞえよういち)さんが解説する連載コラム【国際政治の表と裏】を毎週公開しています。
今週は、「移民」をテーマにお届けしました。
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(文/舛添要一)