この時期の天気予報、やたら出てくる謎ワードにモヤモヤ… 6割の人が「分かりにくい」
天気予報に度々登場する「◯月並の気温」という表現。約6割もの人が「分かりにくい」と感じているが、本来の意味を誤解している可能性も…。
この世には「東京ドーム◯個分」を筆頭に、分かりやすいのか分かりにくいのか「よく分からない」フレーズが一定数存在する。アンケート調査の結果、半数以上の人々が、天気予報にやたらと登場するフレーズを「分かりにくい」と感じていることが判明したのだ。
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■「気温差の暴力」に苦しむ日々
季節の変わり目は天気・気温が安定しないと言われるように、ここ数日の気候はまさにその通り。都内近郊でも4日は「秋本番」とも言える涼しさ(寒さ)が見られたものの、5日は気温が上昇し、本日6日もよく似た気温になるという。
そうした天気の日は経験上、「朝晩は冷えるが、日中は陽射しが強い」というケースが多いため「暑がり日本代表」を自認する記者としては、非常に困ってしまうのだ。既に服装を誤り、風邪をひいてしまった感すら漂っている…。
そこで今回は全国の男女1,000名を対象として、天気予報で「季節外れの気温」を表現するフレーズに関する意識調査を実施することに。
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■◯月並の気温、ピンと来る?
調査の結果、天気予報で見られる「◯月並の気温」という表現を「分かりやすい」と感じている人は全体の41.4%と判明。つまり、約6割もの人が同フレーズを「分かりにくい」と捉えているワケだ。
回答者の居住エリアによって傾向が変わるのでは…と、地域ごとの回答を見ると、北海道・東北や九州・沖縄など「寒い」「暑い」がハッキリしているエリアは「分かりやすい」の回答率が比較的高いと分かる。しかしそれでも、半数以上が「分かりやすい」と感じているエリアは存在しないのだ。
個人的に「◯月並の気温」が最も厄介なケースは「季節を先取りしている」場合である。
たとえば10月に「9月上旬並の気温」という予報を目にした際は、数週間〜ひと月前の服装を連想すれば良い。しかし10月に「11月並の気温」と説明された場合、11ヶ月前という大昔の服装を必死で思い出さなければならず、難易度が跳ね上がってしまう。
そこで今回は、多用される割にイマイチ分かりにくい「◯月並の気温」という表現の意図について、「日本気象協会」に詳しい話を聞いてみることに。その結果、思わず納得してしまう数々のエピソードが明らかになったのだ。
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■日本の「天気予報の歴史」を紐解くと…
まずは前提として「◯月並の気温」が意味するものについて尋ねたところ、日本気象協会の担当者からは「平年値に基づいた表現となります」との回答が得られた。
平年値とは、過去30年(現在は1991年~2020年)の平均値(気温については平滑値)を用いて日別の最高気温、最低気温などを算出したものである。
日本気象協会担当者は「こちらの、日ごと・時間ごとに計算されている平年値と実況(予測)値を見比べて『〇月並、〇月△旬並』と表現しています」とも補足していた。
では「◯月並の気温」というフレーズは、いつ頃から使用されてきたのだろうか。
こちらの疑問に対しては「平年値は日本において、1921~1950年の期間以後(1951年)から、10 年ごとに求められていますので、比較する参考資料としての『〇月並み』は1951年(昭和26年)から使用されていたと考えられます」とのコメントが。
なおテレビで天気予報が初めて放送されたのは、53年(昭和28年)2月1日の19時15分から20分にかけてのことで、同日は日本でテレビ放送が始まった記念すべき日。もちろん、それ以前は「ラジオ放送」で天気予報が行なわれていたのだ。
これらの事実を踏まえ、担当者は「『〇月並』という表現は、感覚的に分かりやすく伝える手段として、メディア解説者が使い始めたと考えられます。しかし誰がいつから使い始めたか、詳細は不明な状態です。少なくとも私が日本気象協会に入社した30年以上前には、既に使われている表現でした」「昭和から平成の初めには使われていたようなので、およそ50年以上は使用されているのではないかと思われます」と、見解を示している。
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■「〇月並」を理解するにはコツがあった
多くの国民が苦手意識を持つ「〇月並の気温」だが、諦めるのはまだ早い。
同フレーズを理解するコツとして、日本気象協会は「『〇月並』というのは特定の年や月日の現象ではないので、『いつもの〇月頃はこんな感じ』という感覚を持っておくことが大切だと思います」「少し難しいですが、季節(春夏秋冬の四季と梅雨)の特徴を理解し、さらに細分されている二十四節気、七十二候を意識すると、イメージしやすいのではないかと思います」と説明している。
しかし、天気に関する素人である我われ一般人からすると「二十四節気、七十二候」というフレーズを見ただけで、思わず身構えてしまう。まるで少年漫画に登場する「強キャラ集団の組織名」のような物々しさである。
そんな思いが伝わったのか、日本気象協会担当者は「そこまで難しく考えなくとも、お正月、お花見、ゴールデンウィークや夏休み、秋の行楽など、行事の時の寒さや暑さの思い出であれば、イメージしやすいように思います」「暑さや寒さによって服装やコーディネートに悩まれることも多いと思いますので『〇月にはどんな服装をするか』と考えるのもイメージしやすいと思います」と、表情を和らげる。
スマホに記録された「思い出の写真」を眺め、当時の服装から気温を思い出すのも有効なのだろう。
しかし、加えて注意したいのが「〇月並の気温」という表現を使用する際は、データに基づいた「気温のみ」で比較しているという点。実際は季節によって湿度や日差しの強さが違うため、体感が『〇月頃』と全く同じとなるワケではない。
日本気象協会の担当者も「そのため暑さ・寒さの感覚が〇月頃とは異なり、分かりにくい原因になっているかもしれません」「『〇月並』はあくまで気温だけで比較した表現で、実際には湿度や日差しの強さなどが影響し、体感は若干違うということを意識しておくと良いかもしれません」と、補足している。
なお、今回実施した調査結果を性年代別に見ると、30〜50代は女性を中心として一定数が「分かりやすい」と回答しているのに対し、60代になると割合が一気に減少しているのが興味深い。
こうした傾向について、日本気象協会は「昔より極端な気象現象が多くなっており、高年齢層の方ほど平均的な気温が掴みにくくなっている、ということが考えられるかもしれません」と分析している。
気温が不安定な昨今。ぜひ、これを機に「〇月並の気温」が意味するところを、正しく理解してほしい。
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■執筆者プロフィール
秋山はじめ:1989年生まれ。『Sirabee』編集部取材担当サブデスク。
新卒入社した三菱電機グループのIT企業で営業職を経験の後、ブラックすぎる編集プロダクションに入社。生と死の狭間で唯一無二のライティングスキルを会得し、退職後は未払い残業代に利息を乗せて回収に成功。以降はSirabee編集部にて、その企画力・機動力を活かして邁進中。
X(旧・ツイッター)を中心にSNSでバズった投稿に関する深掘り取材記事を、年間400件以上担当。ドン・キホーテ、ハードオフに対する造詣が深く、地元・埼玉(浦和)や、蒲田などのローカルネタにも精通。
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(取材・文/Sirabee 編集部・秋山 はじめ)
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