アニメイトやピューロランドも被害…犯行予告をしてもなぜすぐ捕まらないのか? 有識者に理由を聞いてみた

卑劣な犯行予告を行う犯人をなぜ警察はすぐ逮捕できないのか? 有識者に聞いてみた結果…。

2024/02/29 05:30


作家でYouTuberの暇空茜さん著書『ネトゲ戦記』がアニメイトで販売開始する直前、アニメイト宛てに「暇空茜の本を販売するなら京アニ事件を起こしてやる」といった犯行予告が届き店頭販売中止となったことを暇空さんがXで暴露し、大きな話題となった。

その数日後である24日には東京都多摩市の屋内型テーマパーク、サンリオピューロランドにも「テロ予告メール」が届いたとして臨時休館になるなど、2月だけで卑劣な犯行予告による業務妨害が相次いでいる。

そんな中で気になるのが、「犯人がなぜ捕まらないのか?」 ということ。重大な事件を引き起こす可能性のある犯行予告なのだから、警察にはすぐに犯人を逮捕してほしいものだが…。



■藤原代表のコメント

いったいなぜ犯人をすぐに逮捕することができないのか? その理由を法人のセキュリティアドバイザーも務め、エンジニアとして活躍するセキュアラミル株式会社の藤原能成代表に聞くと、以下のコメントを得ることができた。


「犯罪幇助にならないように気をつけながら、話をしたいと思います。逮捕について、ある程度詳しく無いと理解もしにくいので概要だけ掻い摘んで話をします。まず、どんな犯罪でもそうですが即日逮捕は現行犯で無い限りありえません。逃亡の恐れがある、もしくは証拠隠滅の可能性がある…そういう場合に逮捕状を出しますが、当然ながら逮捕状発行には要件があります。余り知られていませんが、逮捕には、通常、緊急、現行犯の3種類があります。現行犯なんかは誰でも逮捕可能で、かつ逮捕状は必要ありませんね。

話を戻すと、現行犯で無い場合は逮捕状の発行が必須な訳です。その逮捕状を発行できるのは、当然裁判官です。となると、裁判官が逮捕状を出すに足る理由を提示しなければならないのです。もっと簡単に言えば、警察は犯罪の証拠を集める必要があるのです。まずこれだけで、”逮捕の要件”を満たす為に、どれだけのハードルがあるかおわかりになるでしょう。

次に、逮捕について明るくなった所で当初の議題である「アニメイトやピューロランドの爆破予告犯がなぜすぐに逮捕されないのか?」についてお話をします。犯罪の詳細は公開されていないので、憶測が入ってしまう事は予めご了承ください。

“警察は犯罪の証拠を集める必要がある”、と書いた通り犯罪の証拠を集めるのですが、これが本当に大変なのです。今回の件だと、お問い合わせフォームから爆破予告が送られたそうです。当然、お問い合わせフォームでもどんな人が投稿してきたか、という情報は取っていますね。名前やメールアドレスはいくらでも偽装が可能なので、証拠にはならないでしょう。

そういった場合、インターネットではIPアドレスという、個人を特定する為の住所が存在します。お問い合わせフォームでは一般的に、投稿者のIPアドレスや環境(OSやブラウザ等の環境情報)も同時に記録していますので、これを元に捜査します。

IPアドレスは、各プロバイダーに割り当てされているので、少し捜査すればどのプロバイダーから発信されたものなのか、比較的簡単に特定する事ができます。あとは投稿時間とアドレスを照合して、そのIPアドレスがどの契約者から発信されたものか…これを調査すれば良いのです。これを同定作業といいます。

ここで問題になるのが、調査ベースが “IPアドレス” ベースなのです。つまり、その”IPアドレスが正しいもの”という前提で捜査する必要がある訳です。

それではそのIPアドレスを偽装する方法があれば、どうでしょうか。プロバイダが特定できなければ、契約者から同定作業ができません。
例えば海外のプロバイダを利用する、とかですね。こういう風に接続元をややこしくするだけで、捜査に膨大な時間が掛かります。IPアドレスの隠蔽方法は様々ありますが、犯罪者はその情報を共有して犯罪行為に及びます。

だから、結果として「アニメイト爆破予告犯はすぐに逮捕できない」のです。恐らく今回の犯人もそういう隠蔽工作をして、犯罪行為を行っているはず。だから時間が掛かってしまうのは仕方がないのです。

ただし、この隠蔽方法が確実なのか?と言われたらそんな事はありません。当然世界中で問題になっているので、その対策方法は日々研究されて共有されており、昔では “難攻不落と言われたIPアドレスの隠蔽方法” を使った相手でも逮捕されています。海外のニュースなので日本では話題になっていませんが、日進月歩なのです。私のようなセキュリティアドバイザー達の集合知によって、特定方法も進んでいます。

少しでも早く、この卑劣な犯人が捕まる事を願ってやみません」


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■卑劣な犯人は絶対に許してはならない

ひとことで逮捕と言っても犯人の特定作業それまでのプロセスは複数に渡り、関わる人も少なくないため、警察もすぐには逮捕することができないようだ。

藤原代表も話していたが、表現の自由の侵害や子供たちも多数集まる施設の安全を脅かす、卑劣な犯人は絶対に許してはならない。いちはやく逮捕されることを切に願う。

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(取材・文/Sirabee 編集部・熊田熊男

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