お釣りで渡された奇妙な100円、偽金と思いきや… 50年前の転売ヤー大興奮なレア物と判明
お釣りで返って来た見慣れない百円玉に、ネット上では「偽物では」との声が。造幣局は「支払い時に使用できる」と説明している。
■順調と思われた貨幣発行に暗い影が…
松屋のお釣りで出てきたんやけど、何やこれ? pic.twitter.com/lJPMG5OFQJ
— 和歌山の旅人ハヤタ (@qM9so2TIVl6oV2H) June 1, 2024
話題になったこの百円玉は、ズバリ「沖縄国際海洋博覧会記念100円白銅貨幣」なる記念貨幣。1975年(昭和50年)に発行されたもので、素材・量目・直径などは、現在流通している通常の百円玉と同様だという。
同貨幣の製造について、造幣局 担当者は「1975年7月20日から翌年1月18日までの半年間に渡り、沖縄県国頭郡本部町において『沖縄国際海洋博覧会』が開催されることになりました」と説明する。
同博覧会は国際博覧会条約に基づく博覧会であると同時に、沖縄の本土復帰の記念や、同県の広域開発に資することを目的とした国家的事業でもあり、政府は各般の支援と協力を行った。
この一環で開催決定と前後し、記念貨幣発行の機運が高まると共に、沖縄や沖縄国際海洋博覧会協会からも発行の要望が寄せられたのだ。
製造・発行まで順調に思われた記念貨幣だが、令和に生きる我々もその名前を知っている「世界的な混乱」が同貨幣の製造に大きな影響を与えることに…。
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■転売ヤーのご先祖さまが既に?
その混乱とは「オイルショック」(石油危機)である。
当時の状況について、造幣局は「当初発行を予定していた記念貨幣は『日本万国博覧会記念100円白銅貨幣』の規格と同一のもので企画を進行していました」「しかし、オイルショックに端を発した総需要抑制策から波及した原材料の節約の問題などを踏まえて小型化することとなり、通常の100円貨幣と同一に決定されました」と振り返る。
ちなみに万博の記念貨幣が直径28mm、量目(重さ)9gだったのに対し、通常貨幣は直径22.6mm、量目4.8gであった。
また発行枚数に関しては、先例となる「札幌オリンピック記念貨幣」(3,000万枚)、「万博記念貨幣」(当初の発行は3,000万枚だったが4,000万枚になった)が、引き換え当日の夕刊に「3,000万枚あっという間」「早くも古銭商で高値取引」などと報じられた点を考慮したほか、海洋博協会等からの要望もあり、倍の6,000万枚に決定。
デザインには相当な気合が入っており、とくに「波」の図柄をめぐっては、かなり多くの討議が実施されたそうだ。
かくして75年7月3日より(海洋博会場では開会当日の20日から)一般引換が開始されることとなり、同貨幣は大好評で迎えられる。
しかし、同記念貨幣にプレミアをつける人物が現れたり、貨幣商が100枚単位で単価260円〜300円で取引を行う事態にまで発展。最終的には様々な要望を加味し、6,000万枚の追加発行が行われたそうだ。
50年経った現代日本でも限定品の「転売」が問題視されているが、もう50年経っても同様の現象が見られるはず…と考えてしまうのは、記者が捻くれているだけだろうか。
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■造幣局が呼びかける注意
現在も「支払い時に使用できる」という同記念貨幣。
しかし、造幣局の担当者は「今回の『沖縄国際海洋博覧会記念100円白銅貨幣』を含む記念貨幣は、通常の流通貨幣とは素材や大きさ、図柄が違うことがあり、当該貨幣の存在をご存知なく、店頭で使用を断られる場合や、自動販売機等で使用できないケースもあると思われます」と、推測する。
続けて「そのような場合は、日本銀行や金融機関の窓口で通常の流通貨幣と引き換えて頂けば、ご使用頂けます。ただし金融機関や枚数によっては、手数料が必要になる場合がありますのでご注意ください」とも呼びかけていた。
お釣りの小銭1枚1枚に注意を払わない…という人が大多数と思うが、ひょっとしたら思わぬ「レア物」が隠れているかもしれない。
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■執筆者プロフィール
秋山はじめ:1989年生まれ。『Sirabee』編集部取材担当サブデスク。
新卒入社した三菱電機グループのIT企業で営業職を経験の後、ブラックすぎる編集プロダクションに入社。生と死の狭間で唯一無二のライティングスキルを会得し、退職後は未払い残業代に利息を乗せて回収に成功。以降はSirabee編集部にて、その企画力・機動力を活かして邁進中。
X(旧・ツイッター)を中心にSNSでバズった投稿に関する深掘り取材記事を、年間400件以上担当。ドン・キホーテ、ハードオフに対する造詣が深く、地元・埼玉(浦和)や、蒲田などのローカルネタにも精通。
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(取材・文/Sirabee 編集部・秋山 はじめ)