アラサー男子が「青春18きっぷ」で東京から高知まで行った結果
「青春18きっぷ」は春夏冬の長期休暇に発売される特別切符。JRの普通列車、快速列車がに1日中乗り放題になり、5枚綴りで1万1850円というお得感もあって、長旅や時間に余裕のある大学生の帰省の強い味方だ。
しかし、未経験者からは「移動時間が長いと体もしんどいし、退屈でしょ?」と反論されることが少なくない。実際のところ、どうなのだろうか? 東京から高知にまで行って確かめてみることにした。
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■1日目 三軒茶屋駅→岡山駅
5時11分の始発に乗る。駅にはすでに結構人がいてびっくりした。
渋谷駅で乗り換え、品川に向かう。このときは記者の顔色もまだいい。
さて、青春きっぷでの道中、多くの人が悩むのは暇な時間である。そこで、Amazonプライム会員の記者は、複数の武器で対抗することにした。
・「Fire タブレット」⇒動画鑑賞用。1.2万本以上のタイトルが無料で視聴可能。
・「Kindle Paperwhite」⇒読書用。タブレットでも読書は可能だが、読みやすさの点で記者はこちらを選択。旅行に合わせて120万以上のコンテンツが読めると話題の「Kindle unlimited」にも加入。
・「Amazon Music」⇒スマホでアプリをダウンロードし、使用。会員なら完全無料。
初期投資は諸々込みで15,000円程度。年会費を含めても、全部で30,000円程度で済む。うーん、安い……。(記者はAmazonの回し者でもなんでもない)
まず、最初に選んだのは映画『最強のふたり』。タブレットはWi-Fiが必要なので電波が悪いところは荒れたりしたが、基本良好。解像度もそこまで悪くなく、ダンスシーンなどでなければ余裕で視聴に耐えうる感じ。
ただ、時折自分の顔が画面に反射することはかなり鬱陶しかった。なので、ブサイクな自分の顔が映り込むのがどうしても嫌! という人は石原さとみのお面でもつけて見るといいんじゃないだろうか?
浜松までに『最強のふたり』を見終わり、次は『テッド2』。電車の中でニヤニヤする記者は、きっと相当気持ち悪かったであろう。
映画を2本見た後は、気分を変えようと「Amazon Music」に変更。さすがに日本人アーティストは少なく、今流行っている曲もあまり聞けないのだが、ゲスの極み乙女。とindigo la Endは数枚のアルバムを聞くことができた。まさに「絵音メドレー」である。
「ベッキー、今頃何してるんだろな……」と想いを馳せながら窓の外、流れる景色を眺めた。豊橋、大垣を通過。
しかし、米原に着く頃には疲れがかなりきている感じ。ちょくちょく仮眠を取るも、さすがにしんどい……。新大阪駅を通過した頃には「自分、25歳にもなってなに大学生みたいなことやってるんだろ?」という気持ちに。
このときに自撮りした写真。まるで犯罪を犯して逃避行をしている人のような表情である。目はすでに死んでいる。
播州赤穂では、青春きっぷユーザーと思われる人同士の席の奪い合いが勃発。走って確保したが、順調に消耗した。
この頃にはずっと品川から同じ電車に乗ってきた男子大学生3人組も見なくなった。一瞬、「奴ら、長旅から脱落したのか……」と思ったのだが、冷静に考えてもう目的地に着いたのだろう。みんなが記者のように高知まで行くわけではない。
そして、18時過ぎにやっとのことで岡山に到着。朝5時から18時過ぎまで、ほぼずっと電車に乗りっぱなしである。
(1日目の行程)三軒茶屋→渋谷→品川→沼津→浜松→豊橋→大垣→米原→姫路→相生→岡山
おわかりいただけただろうか? 青春18きっぷでは高知まで、1日では余裕でたどり着けないのである。飛行機なら1時間ちょいなのに……。
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■2日目 岡山駅→高知駅
2日目は7時10分の電車に乗車。この日は16時から予定があったのだが、この時間に出ないと高知には間に合わないのである。寝不足もあって、この電車ではAmazonは一休み。
坂出、琴平駅を経由して、9時55分に徳島県・阿波池田駅に到着。
しかし、11時57分まで電車がなく、2時間待つことになる羽目に。本来であれば付近を散策してもいいが、厳しい照りの中出歩くのは、1日以上電車の中で過ごして体力を消耗した人間には厳しいので諦めた。
(と言うか、記者はこの旅行は出張の一貫であり、本来の目的はよさこい祭りへの参加であった。ちなみに、この翌日のことである。色んな意味で死亡したのは言うまでもない)
あまりにもやることがなかったので、求人広告を見ていたら気づけば20分くらい過ぎていた。きっと、疲れていたんだろう……。
2時間後、1両編成の電車に乗り、駅を出発。昨日触れなかったKindleで読書をすることにした。選んだのは『夢をかなえるゾウ3』。さっきからずっと、とっつきやすそうなコンテンツにばかり触れているが、これは疲れて難しいことがわからなくなっているからである。
「僕の夢って、何だったっけ……?」と、四国の豊かな自然の中で考えるのは初めての経験であった。
そんな感じで電車に乗り続けること数時間。香川、徳島を経て高知へと進む。道中はほぼ山の中で、景色はとても美しい。吉野川の清流が見え、心が洗われる……とそのとき、記者はふと思った。
「これだけ景色が綺麗なのに、自分はなんで映画を観たり、読書をしたりしているんだろう……?」
澄み切った川面に白い雲が反射する景色など、都心部では滅多に見れるものではない。さすが、「日本一の清流」だ。
なにげない風景が、都会で消耗する人間にとっては素敵なものに思える。
たしかに、Amazonプライムは楽しいし、長旅に便利だ。それは認める。しかし、今はもっと貴重な経験ができるんじゃないのか……?
そう思った記者は、Kindleとタブレットをそっとカバンに閉まったのである。いや、むしろ気づくのが遅すぎたかも……。青春18きっぷで旅行する人はこういうのを楽しむわけだし、楽しめない人は鈍行旅行には向いていないのでは……?
自分のアホさを噛みしめて悲しくなっているうちに、電車は高知駅に到着した。出発からおよそ33時間後、14時8分のことである。
(2日目の行程)岡山→坂出→琴平→阿波池田→高知
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■1日半の長旅が終了した結果
結論としては、「青春18きっぷで東京から高知に行くことは可能だが、信じられないくらい疲れるし、映画も読書も飽きる」ということがわかった。おまけに、腰は崩壊寸前。なんだか、行く前から予想できた感もあるが、そこは考えないでおこう。
かかった費用としては、青春きっぷ2日分4,740円と、岡山で宿泊したカプセルホテル3,980円で8720円。後日、腰痛で6,000円のマッサージに行ったので、14,720円だった。ちなみに18日現在、LCCトラベルでは片道15,700円が最安値となっているので、正直ほとんど変わらない。
ゆえに、お金のことだけを考えたならやはり四国には飛行機で行くのが良いだろう。しかし、自然を楽しんだり、山中で哲学をしたい場合は青春きっぷ旅も悪くない。経験した人にしかわかり得ないロマンや気付きがそこにはあるのだ。
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(取材・文/しらべえ編集部・岡本拓)