肩書は同じ「編集」でもこんなに違う 文芸編集者のお仕事
同じ出版社の「編集」と言っても、担当するジャンルによって、かなり内容が異なる編集職。雑誌編集者に続いて、今回は文芸担当の編集者に迫る。
■文芸の編集者
前年の流行語大賞にノミネートされた単語が、そのままタイトルに使われたことが話題になった、2015年の冬クールの『ゴーストライター』(フジテレビ系)は、人気作家をめぐる文芸編集者の暗躍が原因で、ヒロインたちが翻弄されるストーリーだった。
国内大手出版社で文芸作品を担当する編集者、Yさんはこう話す。
「雑誌編集者は7割、読者のことを考えていると言っているの? その例でいえば、文芸編集者の7割は作家のことを考えています。
孤独な執筆作業に打ち込む作家に寄り添い、作品が書けるように勇気づけ、元気づけ、盛り上げるのが、最も大事な仕事ですから」
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■諜報活動も仕事のひとつ
作品に必要な資料を収集したり、作家の取材に同行したり、執筆に直接的に関わるお手伝いも含まれるが、業界内の情報収集能力も文芸編集者には求められるという。
「周辺作業はお手伝いできますが、実際に作品を書く時間――文芸作品に一番長く時間が費やされる工程は、作家は1人で立ち向かわなければなりません。
その孤独感から、ライバル作家の状況や他の出版社の動向が、気になってしまう作家の方は多いですね。私たち編集者は、そうした各方面の情報を収集し、先生の状況に応じて報告する――業界内の諜報活動かって? それはどうでしょうね(笑)」
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■1人の作家に10人の担当がつくことも
作家と二人三脚で歩むイメージのある文芸担当の編集者だが、人気作家になると1人に複数人の担当がつくという。
「出版社によって異なりますが、やはり大きな文芸誌を発行しているところは、文芸が重視されていますから、会社としても手厚い体制を作ります。
ある大物作家の先生に、20代・30代・40代…と年代別の担当者が複数ついている状態で、文壇パーティなどで1人の作家さんを1つの出版社の担当10名で囲んでいる――なんてこともありますよ。
同じ作家を担当するライバル会社の編集とは協力し合って情報交換もしますが、先生を囲む会などお互い『あいつより先には、絶対帰らない』となって、全員朝までご一緒する…というのも、文芸編集者あるあるですね(笑)」
作家のエッセイで見かける、担当編集者と朝までコースの話。読者にとっては楽しいネタだが、実はライバル編集者同士が火花を散らす、“さや当て”の現場でもあるのだ。
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(取材・文/しらべぇ編集部・くはたみほ)