「清水富美加の辞め方は…」「枕営業の実態は…」弁護士が芸能界の闇を斬る
事務所移籍や引退、不倫、薬物問題など、芸能界のトラブルが続いている。
そんな中、フジテレビ系情報番組『バイキング』月曜レギュラーで、しらべぇコラムニストでもあるレイ法律事務所の佐藤大和・代表弁護士と、ももクロや水樹奈々にも楽曲を提供するシンガーソングライターで作曲家のしほりが、22日、『これからの音楽業界・アイドル戦国時代を生き抜くための最強サバイバル術』と題したトークライブを開催した。
実際に自らも契約関係やパワハラなどさまざまなトラブルに巻き込まれたというしほりと、芸能トラブルの相談を数多く請け負っている佐藤弁護士。
「『バイキング』では話せないようなネタも激白する」ということで、しらべぇ編集部も取材に訪れた。
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■すぐ訴えようとする弁護士には要注意
佐藤弁護士いわく、「弁護士に相談するタイミングと選び方」がきわめて重要だという。
佐藤弁護士:芸能界は、契約書がないことも少なくなく、またタレント側は「事務所に契約してもらえる」というだけで気持ちが舞い上がって、契約書をしっかり読まない場合もあります。さらに、「弁護士費用は高い」と思われているせいか、トラブルがかなり大きく炎上してから相談にやってくる。
法律相談だけなら無料でやっている法律事務所もありますし、1時間1万円くらいで済むことも。ところが、事態がややこしくなってから持ち込まれると弁護士費用も5、60万円になる場合があります。
あと、エンタメ業界に詳しくない弁護士の中には、どんな案件でもすぐ裁判などで争いたがる人もいます。ところが、人気商売である芸能人の場合、裁判になると番組レギュラーやCM契約が切られたりなど、影響が大きい。「問題が解決しなかったのに、弁護士費用だけかかってしまった」というケースもあります。
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■法律トラブルの前に「人間トラブル」
弁護士に相談するのは早いほうがいいが、必ずしも交渉に弁護士が出てくるのが効果的とも限らない。
佐藤弁護士:事務所移籍のトラブルは、「男女トラブル」に似ている面があります。移籍したいタレント側は「許せないからすぐ辞めたい(=別れたい)」と思う。ところが、事務所サイドは「話せばわかる」ところが大半です。
芸能事務所の経営者の中には感情が強い方もおり、怒らせるとキレますが、育ててもらった感謝の気持ちを伝えると丸く収まったりすることもあります。「法律トラブルの前に人間トラブルがある」と考えるのが、私の信条。
いい先生は、弁護士同士の話し合いで解決に導きますし、弁護士を入れずに解決できたら、私たちの利益にならなかったとしても当事者にとってはそのほうがいいのです。
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■最初にお金を要求する事務所は危ない
芸能界へのスカウトにも、危険が潜んでいる。
佐藤弁護士:ここ数年、渋谷や福岡、大阪などで被害が増えていますが、スカウトをした後、宣材撮影をして高い「写真代」などを要求してくる事務所は危険です。写真1枚で12万円請求されたケースもあります。
さらに、「もっときれいになろう」などと言って、美顔器やエステのローンを組まされる。よくわからない芸能事務所と契約をさせられることも。この違約金が20万〜30万円ほどの場合が多いのですが、おそらく「弁護士費用が20万円くらいだからわざわざ訴えないだろう」という計算なのだと思います。
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■清水富美加の辞め方は追及しにくい
佐藤弁護士:清水富美加さんが「出家する」という理由で所属事務所と契約終了すると発表しましたが、このように出家すると追及しにくい側面はあると思います。信教の自由があるから、そこを主張されると事務所もテレビも対応しづらいんです。
幸福の科学が行なった記者会見に対して、事務所が対抗して会見するのは異例中の異例ですし、「事務所が主張せざるを得なかった」ということ。テレビは宗教を批判できないし、中途半端な扱いになってしまう。結果的に、揉めれば揉めるほど、事務所にメリットはないが教団側の宣伝になってしまうという側面もあります。
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■ネットストーカーと枕営業
イベントでは、ストーカーや枕営業といった「芸能界の闇」にも切り込んだ。
佐藤弁護士:芸能人の方から、「ネットのストーカーに『殺す』と言われた」といった相談もよくいただきます。タレントさん本人は本気で怖がっているのに、事務所サイドは「それをニュースにしたい」「話題にして盛り上げたい」というケースも。命の危険もあるきわめて危ない戦略です。
実際ニュースになった場合も、タレント自身が危険を訴えたくて出ているのか、事務所が露出を稼ぐために出させているのか、注意が必要。なぜなら、話題作りのために、事務所関係者がネットストーカーを仕掛けていたケースまであるからです。
また、枕営業の相談は、3ヶ月に1回くらいのペースでいただきます。「ホテルに行ったほうがいいのでしょうか?」と聞かれるのですが、つい「弁護士に聞く前に自分でダメだって判断してよ!」って思いますね(苦笑)。
しほり:枕営業は周りでは聞きませんが、売る側が、「私情や恋愛感情によって押す子」「売る子」を決めがちな傾向があるチームもあり、アーティストが生き残るために男性権力者に気に入られるよう無理をされているケースもあります。
■芸能人ほど手に職をつけるべき
芸能人が枕営業などに堕ちてしまうのは、構造的な問題もある。
佐藤弁護士:芸能界には、すごく真面目で純粋な人が多く、こういうことから傷ついて夢破れてしまう人が少なくありません。だから、タレントさんには「資格でもなんでもいいから取りなさい」と伝えます。芸能界の道が絶たれても他の仕事ができれば、枕営業なんかを迫られたときにはっきりと断れるはずです。
芸能界からAVなどカラダを張った仕事に進むのも、本人が進んで挑戦するのなら問題ありません。でも、他に行く道がなく、行かざるを得ないから行くのはよくない。
しほり:私も、現時点で売れている歌手の子だとしても、「手に職をつけなさい。作曲までは難しいとしても、せめて作詞はできるようになりなさい」とアドバイスしています。歌の仕事が万が一なくなったりしても、作詞作曲ができれば印税収入を得られたり、将来に繋がる新たなキャリアをつけることもできるからです。実際、作詞で成功している人もいます。
佐藤弁護士:「売れてるうちからそんなことを考えるのはダサい」という思い込みがあるんですよね。でも、「背水の陣」はかっこいいかもしれないけど、セカンドキャリアのイメージや資格がないのは、「無謀」なだけ。結局、まわりの人に迷惑をかけてしまう。
■芸能人を守る団体を立ち上げたい
佐藤弁護士自身も、以前、自分が意図するのと違う形でテレビ出演させられたこともあるという。
そうした自らの経験も踏まえて今、佐藤弁護士が安井飛鳥弁護士らとともに立ち上げようとしているのが、芸能人たちが自らの権利を守るための団体だ。
佐藤弁護士:ダウンタウンの松本さんも話していましたが、「俳優組合」のような芸能人の人権を守る団体をつくらないといけないと考えています。芸能人だけでなく、弁護士を巻き込んで動いていきたい。アメリカでは俳優のユニオンが大きな力を持ち、権利保護のために活動しています。
しほり:今の芸能界は、このままだと縮小していくかもしれないのに、業界全体をよくしようとは思わずに自社だけを潤わせ、守ることを考えているが多い印象。なので、すごくいいと思います。
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