キンチョール買いに行ったはずが買ったのは「フマキラー」 そこに隠れた経済学
【得する経済学】よく知っている商品なのに片方は498円でもう片方は298円。そこには隠れた経済学が……。
Sirabeeでは、戦略コンサルタントの鈴木貴博(すずきたかひろ)さんの連載コラム【得する経済学】を公開しています。街角で見かけるお得な商品が「なぜお得なのか?」を毎回経済理論で解説する連載です。
今週は「キンチョールとフマキラーの価格が違う事件」を掲載します。
「キンチョール、逆さにしたらルーチョンキ」
…のコマーシャルで一世を風靡したキンチョールを買いに行きました。いつそんなのが流行ったんだって? 昭和のクレージーキャッツのCMですよ。覚えていますよね、読者の皆さん?
つい最近、もうずいぶん歳をとった母の家を訊ねたらコバエがたくさん飛んでいるんです。なんか最近増えたんだって母がぼやくのです。それでキンチョールを買ってきてほしいと頼まれたわけです。
■498円と298円、なんでこんなに値段が違う?
「ハエハエ蚊蚊蚊、キンチョール」というぐらい蚊やハエに対しては昔から信頼できる殺虫剤です。
近所のドンキに行ったら498円で売っていて、それがまあ高いか安いかはわからないのですけれどドンキだからまあいいかと。手に取ってレジに行こうとしてふとみると、その横にフマキラーが298円で売っています。
「おやおや、こちらは4割も安いじゃないですか。どうしようか?」ということになりました。
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■神の見えざる手は結構いいかげん
ここでよく考えてほしいのです。同じような商品が4割も価格が違うってどういうことでしょう?高校で習った経済学では資本主義の日本ではアダム・スミスの神の見えざる手が働いて、同じような商品の価格は同じところに収束するはずでした。
「ということはキンチョールとフマキラーは中身が違うの?」
厳密には成分が違うかもしれませんが、どちらもハエと蚊に効くスプレー式の殺虫剤でかつ分量も同じ450ml。要するに現実の経済の世界では学校で習った経済学とは違って、何らかの条件で同じようなものがずいぶんと違った価格で売られるものなのです。
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■価格の違いは業界順位に理由がある
なぜフマキラーが安く売っていたのかわかりますか? じつは業界シェアに秘密があります。殺虫剤の世界では一番たくさん売れているのがアース製薬、2位がキンチョールの金鳥、そして3位がフマキラーという順位になっています。
そして、じつは1位と3位の会社は値下げ攻勢をかける傾向があるんです。
トップ企業はブランド力のある商品を安い価格で売ることでたくさん売ろうとする。だからトップシェアになる。キューピーのマヨネーズやキッコーマンの醤油が一番売れているのに安いのはそれが理由です。
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■よく知ってるブランドでも業界3位、4位は安い
2位の企業は「その競争には乗らないよ」といって価格を下げずに利益を確保しようとする。トップブランドとは違って意外と安売りしているお店を見つけにくかったりもするものです。
それで3位の企業はそんなことも言ってられないから必死に値下げしてなんとか売ろうとする。4位も同じです。どこの業界でもそんなことが起きています。
そこで、「業界下位の会社の商品は品質が良いのにセールで激安になることが多い」と覚えておいてください。フマキラーが激安で売っているのを見つけたらそのときは「買い」なんです。
今日キンチョールを買いに行って、フマキラーを買って帰ってきたのはそんな理由です。
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(取材・文/鈴木貴博)