フィリピンは日本人犯罪者の天国? 「ルフィ引き渡し」に外交上重要な点がある
【舛添要一『国際政治の表と裏』】ルフィを名乗る男らが起こした連続強盗事件。容疑者たちがいたのはフィリピンの収容所だ。じつは同国、日本にとっては重要な国で…。
日本各地で行われている連続強盗事件の指示役たちが、フィリピン入管の収容所にいることが判明した。収容所の中でパソコンやスマホを自由に使い、犯罪行為を実行していたというのだから、驚くとともに、この国はどうなっているんだと呆れてしまう。
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■自由に犯罪が行われる収容所に驚く
おカネを払えばエアコンつきの個室も使える。また、収容所の職員に賄賂さえ渡せば、スマホやパソコンを何台も使えるし、豪華な食事を運ばせることも可能だという。この環境を利用して、犯罪者たちが、特殊詐欺や強盗事件の指示を行っていたようだ。
日本政府は、首謀者たちの日本への引き渡しを要求しているが、35億円もの特殊詐欺を働いていたという。
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■大統領の日本訪問が「引き渡し」促進
フィリピンのマルコス大統領が8日から12日まで日本を公式訪問する。昨年6月30日の大統領就任以来、大統領の初の日本訪問となる。フィリピン政府は、この訪問前に、容疑者の移送問題を解決することにし、日本側の要求通り、容疑者を早期に引き渡すようである。
そうしなければ、日本国民が反発して、大統領訪問が失敗に終わる危険性があるからである。フィリピンにとって、日本は最大の援助国であり、その機嫌を損なうと、経済援助にまで悪影響を及ぼす。逆に、迅速な身柄引き渡しを行えば、日本から歓迎されることになる。
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■私がかつて訪ねた刑務所では…
私は、海外取材のために多くの国を訪ねたが、フィリピンにも何度か行った。要人と会見するとともに、最下層の人々の生活を見るためにスラム街にも足を運んだ。そして、刑務所も訪ねてみた。
警察官が案内してくれたが、鍵もきちんとかかっていないような状態で、脱走しようとすれば簡単にできそうな感じだった。老若男女が収容されており、まるで、一つの町内会がそこで生活しているような雰囲気であった。逃げて生活に困るより、刑務所の中で安穏と生活するほうがよいという思いの囚人ばかりのようであった。
囚人の一人が小売店を開いていた。刑務所内のコンビニである。そこで、食品から日用雑貨まで何でも買える。およそ日本人には想像できない刑務所の様子であった。今回の事件で、入管の収容所内部がテレビで紹介されていたが、かつて取材した刑務所を思い出した。全く同じ印象である。