おそらく都内最安値のパーマ+カット料金3960円 このお店はなぜ安くできるのか?

【鈴木貴博『得する経済学』】激安美容室に1000円カット店…。安く髪を切ってくれるお店はいったいなぜ安くできるのか。経済のメカニズムを解説する。

2023/05/28 05:15


美容室
「ベーシックパーマとカットのコースでお願いします」

「わかりました。税込みで3,960円になります」

プロフィール写真でおなじみの私のこの髪形ですが、いつも行く東京・中野にある美容室のお値段はこの価格です。おそらくパーマをかけてもらう際の美容室の料金としては都内最安値に近いのではないでしょうか?

たまに「同業の文化人のひとたちはいくらぐらいかけて髪形を整えてもらっているのだろうか?」と思います。カリスマ美容師にパーマ+カットをお願いしたらこの価格にプラス1万円ぐらいは最低でもかかりそうです。

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■タイパを選ぶか? パフォーマンスを選ぶか?

カリスマ美容師と普通の美容師では仕上がりに大きな差があるのでしょう。今日の話はそこではなく、このお店ではなぜ普通の美容師よりも安くパーマをかけられるのか、経済のメカニズムの話をさせていただきます。

私はついこの間までは駅前にある「QBハウス」で1,000円で髪を切っていました。ちなみに今では諸物価高騰の関係で1,000円ではありませんね。まあそれはそれで時代です。

私はほぼ30年近く、ずっとQBハウスを使ってきました。理由は10分で終わるからです。この「早く切り終わる」というサービスは特に私の30代、忙しくて忙しくて仕方がなかった当時のわたしのライフスタイルにぴったりマッチしました。


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■カリスマコンサルはカリスマ美容師が苦手

わたしは比較的頻繁に髪を切らないといけない体質です。髪が伸びるのが早いからです。昔はよく友達から、

「髪が伸びるのが早い人はエロいらしい」

とからかわれたものですが、その真偽はよくわかりません。一種の都市伝説でしょう。

30代のコンサルはハードワークなので月に2~3回しか休日がとれません。それを美容室に行く時間に使っていた頃は、本当に無駄だなと感じていました。QBハウスが登場してからは逆に2週間に一度ぐらい、仕事の合間に髪を切れるようになって助かっていたのです。

さて髪を切ってもらう側にとっても10分で終わるのは楽ですが、髪を切る側にはもっと大きなメリットがあります。業務の生産性が上がるのです。そもそも他の理容室よりもQBハウスは安いので顧客がひっきりなしにやってきます。仮に60分で5人のお客さんをこなすことができたら収入は5,000円。1時間かけてひとり散髪して3,600円もらうよりもずっと仕事を多くこなせるのです。

このことを経済学では「回転率が高い」と言います。回転率が高いお店は、単価を安くしても十分に儲かるのです。


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■美容室でも回転率重視のお店が登場

さて、このQBハウスのやり方を美容室に導入したのが冒頭の中野のお店です。予約を一切とらず、お店に到着した順番で待ち行列ができます。ですからお店の側はいつも誰かの髪を切っている状態で、とても回転率が高いお店です。

そこでパーマの経済性の話なのですが、実はパーマをかけにくるお客さんは1時間余計に時間がかかりますが、接客時間はそれほど長くないんですね。パーマを巻いたらあとは50分ほど放置していればいいのです。もちろんパーマ液など原価はかかるのですが、このお店はそれも計算したうえで「パーマについても回転率を上げれば大丈夫」という結論になったのでしょう。

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■美容室にかかる時間は以前ほどは無駄じゃない

でも忙しい私はこの美容室でパーマをかけるとだいたい2時間半ぐらい時間がかかります。待ち時間に1時間、パーマをかけて1時間、その後カットで30分ぐらいという感じでしょうか?

「だったらQBハウスよりもタイパ(時間対効果)が悪いんじゃないの?」

と思うかもしれません。違うんです。

昔と違って今は経済評論家はスマホで情報を収集します。つまり昔と違って美容室での待ち時間に私も仕事をみっちりこなせているのです。こうして美容室は回転率の高さで値段を安くできて、経済評論家はスキマ時間にスマホで仕事をすることでタイパがあがる。WinWinの関係ができているという話だったのです。


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■著者プロフィール

鈴木貴博

Sirabeeでは、戦略コンサルタントの鈴木貴博(すずきたかひろ)さんの連載コラム【得する経済学】を公開しています。街角で見かけるお得な商品が「なぜお得なのか?」を毎回経済理論で解説する連載です。

今週は、「鈴木さんが通っている激安でパーマをかけられる美容室」というエピソードをお届けしました。

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(文/鈴木貴博

鈴木貴博著『日本経済復活の書 2040年、世界一になる未来を予言する』【Amazon】

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