小川紗良、女優と映像作家の二刀流で輝く彼女が映像制作に行きついた理由
高校生のときに映像を撮り始めた小川紗良が映画『ビューティフルドリーマー』で、映研部員の主人公・サラを演じる。
本広克行監督、押井守監督、小中和哉監督、そして上田慎一郎監督が参加する映画実験レーベル「Cinema Lab」。
その第一弾作品として、『踊る大捜査線』シリーズや『サマータイムタイムマシン・ブルース』の本広監督が押井監督原案のストーリー『夢みる人』を映画化した『ビューティフルドリーマー』が、11月6日より公開されている。
驚くべきことに、この映画の大部分がエチュード。つまり、役者たちの即興芝居で物語が作られていった作品なのだ。
しらべぇ取材班では今回、まさに実験的と言えるこの作品で主演を務めた小川紗良にインタビューを実施。女優だけでなく、映像作家としても類稀なる才能を見せる彼女が本作にいかに挑んだのか、そして、自身が映像を撮る側にも導かれたのはなぜなのかを聞いた。
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■あらすじ
文化祭の準備に追われる熱気あふれる先勝美術大学の校内で、映画を撮ったことがない映画研究会の部室だけはいつものようなまったりとした時間が流れていた。
「教室の片隅に何かある」という不思議な夢を見たサラ(小川)は、本当に古いダンボールを見つけてしまう。箱の中に入っていたのは、古い脚本と演出ノート、そして1本の16ミリフィルム。
しかし、それは「撮ろうとすると必ず何か恐ろしいことが起こる」という、映研に代々伝わるいわくつきの台本だった。
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■終始ある「何か起こりそうな」空気感
―――『ビューティフルドリーマー』拝見させていただきました。全編通して「何か起こるのではないか」というハラハラ感があって、とても不思議な感覚でした。小川さんは完成した映像を観ていかがでしたか?
小川:この映画は最初、「文化祭(の準備中)だよ」ってことがわかるシーンから始まるんですけど、そのときの俯瞰した学校の様子だったり、何かが起こりそうだなっていう空気が最初から最後までずっとあって。
その空気が、私たちが繰り広げるわちゃわちゃしたいろんな事件をずっと包み込んでくれているような感じがしました。
―――サラたちが作っている物語が映画の中の現実世界にリンクしていって、楽しいけどどこか寂しくて。この作品の中には、そんな風に思わせられる効果的なシーンがたくさんあったと思うのですが、印象に残っているシーンはありますか?
小川:エチュードでどんどん話を作っていったので、私たちも演じながら、どこがどう使われているのか全然わからない状況だったのですが、その中で、当日急に入ってきたシーンもけっこうあって。
例えば、映研部員のみんなが部室からいなくなったあとに、一人戻ってきたサラがナレーションを読み出すシーンは、急に映画の外側に行ったような不思議なシーンで、本広監督が現場で急に入れて、その原稿を私が自分で書いたんですけど、これがどこでどう使われるんだろうと思いました。
でも、出来上がったものを観て、あのシーンがあることでこの映画がより複雑さを増すというか、構造が分厚くなったような感じがして。「あっ、そういう使い方で入れたんだ」と、映画を観てわかったので、すごいなって思いましたね。