突然の「ゼロコロナ政策」大転換で“感染爆発”引き起こした習近平政権の罪
【舛添要一『国際政治の表と裏』】突如撤回された中国の「ゼロコロナ政策」。習近平政権に大きな綻びが見え始めている。
■データが不足するリスクが高まる
大規模な検査を中止したため、軽症者や無症状者について把握できなくなり、中国政府は新規感染者数の発表を行わないことを決めた。さらに、入国者に義務づけていた隔離措置を来年1月8日に終了。政府の新たなルールでは、新型コロナウイルスは、分類が「甲類」から「乙類」に引き下げられ、強制隔離をしないことにする。
また、民間企業や研究機関に対して新型コロナウイルスのゲノム(遺伝情報)配列の解析を当分の間、行わないように指示した。問題は、データが不足して、新しい変異株が発生しても気づくのが遅れる可能性があることである。
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■科学ではなく政治が主導する対策の危険性
中国での感染者急増という事態を前に、日本政府は12月30日から、中国からの入国者に対して、水際対策を強化することにした。
これに反発した中国政府は、「防疫措置は科学的かつ適度であるべきだ。正常な人的往来に影響を与えるべきではない」と述べたが、これまでのゼロコロナ政策こそ、「科学的かつ適度」ではなかったのではないか。これはどの国の政府についても言えることであるが、感染防止対策と経済活動のバランスを上手くとるのは容易ではない。
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■習近平政権の大きな失敗
ゼロコロナ政策が経済活動を麻痺させ、国民を疲弊されてきたにもかかわらず、習近平政権は10月半ばまでこの政策を称賛し、継続してきた。ところが、一変して規制解除である。感染急拡大の背景には、感染者が少なく、免疫を持たない人が多いということがある。
また、中国製のワクチンはファイザーのようなメッセンジャーRNA活用のワクチンよりも効能が落ちるようである。さらには、農村ではワクチン嫌いの高齢者が多く、接種が進んでいないこともある。今後、さらに感染が拡大し、死者の数が増えるようだと、習近平政権は3期目のスタートで大きく躓くことになる。
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■執筆者プロフィール
Sirabeeでは、風雲急を告げる国際政治や紛争などのリアルや展望について、元厚生労働大臣・前東京都知事で政治学者の舛添要一(ますぞえよういち)さんが解説する連載コラム【国際政治の表と裏】を毎週公開しています。
今週は、「新型コロナウイルスの感染爆発を引き起こした中国」をテーマにお届けしました。
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(文/舛添要一)