トルコ・シリア大地震 「地震大国」日本はいまこそ危機管理の発想を優先させるべきだ
【舛添要一『国際政治の表と裏』】未曾有の大災害となったトルコ・シリア大地震。危機管理という点では防衛も防災も同じだが、日本は…。
■高速道路=直線のスイスとカーブの日本
スイスでの体験で面白かったのは、高速道路が臨時の滑走路に変わる訓練である。戦争のときには、敵は空軍基地を攻撃する。そうすると自国の戦闘機は飛びたてなくなってしまう。そこで、高速道路の中央分離帯を近隣の住民が取り外し、両側4〜6車線の滑走路に変えるのである。
高速道路沿いの岩山に作られた格納庫・シェルターから戦闘機が滑走路になった道路に入り、離陸する。スイスのパイロットは道路に少しカーブがあっても、うまく離着陸する技術を身につけている。
スイスでは、高速道路は滑走路としても使えるようにできるだけ直線にしてあるが、日本の高速道路を見ると、そうなっていない。逆にカーブが多い。それは居眠り防止のためだという。国の安全保障を優先する国と、個人の不注意である居眠り対策優先の国とのギャップは笑い事ではない。
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■ヘリコプターも着陸できない東京の幹線道路
今回のトルコ・シリア地震でも倒壊した建物の瓦礫で、道路が寸断され、重機が入れず、救出活動が遅れている。私は、都知事のときに、環状7号線、8号線などの幹線道路を災害時にヘリポートとして使えないか点検してみた。
ところが、電線や信号機などが多すぎて、不可能であることが判明した。日本では、道路を作るときに、防災や防衛のことは考えず、ただ車を走らせること、交通事故を少なくすることしか頭にない。一石二鳥といった発想がないのである。
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■川や運河を活用する
道路や鉄道が寸断されたらどうするか、そこで私が考えたのは川や運河である。東京は「水の都」と言って良いほど、江戸時代から水運の発達した都市である。
時代劇などを見ても、船で運河を使って人や物を運んでいる光景がよく出てくる。船の運搬能力は馬車や車などの地上の乗り物を遙かに超える。隅田川、荒川、江戸川などの大河川を遊覧船で移動すると、周辺の運河も見えるし、東京が水の都であることがよく分かる。
災害のときのみならず、交通渋滞や満員電車を避けるために通勤のときにも利用する方法も取り入れた。羽田空港から、東京湾を船で移動して、都心に上陸する方法もある。今はかなり時間がかかるが、時間にゆとりのある人は、空港から素晴らしい水の都を満喫しながら都心に向かうこともできる。
これからの国作り、都市作りには安全保障、防災の視点が不可欠である。
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■執筆者プロフィール
Sirabeeでは、風雲急を告げる国際政治や紛争などのリアルや展望について、元厚生労働大臣・前東京都知事で政治学者の舛添要一(ますぞえよういち)さんが解説する連載コラム【国際政治の表と裏】を毎週公開しています。
今週は、「トルコ・シリア大地震と日本の危機管理」をテーマにお届けしました。
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(文・舛添要一)