平成の御代を振り返る 藤原敏史監督に聞く「今上天皇は稀代の『有徳』の天皇」

東日本大震災を記録したドキュメンタリー映画『無人地帯』でも高く評価された藤原敏史監督は、天皇陛下と直接話した経験を持つ。

2019/03/09 14:30


 

■両陛下の「信じがたい凄み」とは

天皇陛下

———平成は震災のときでした。天皇・皇后陛下が被災地を訪れ、被災者と同じ目線で語りかけるというスタイルが「平成流」と言われましたが、どのようにご覧になりましたか。また、今上陛下の被災地訪問についてどう思いますか?

「まず歴史的な天皇制においてとりわけ重要な神話上の天皇で、明治以降の皇国史観ですら初等教育で最も重視されていたのが仁徳天皇です。


被災地に飛ぶ天皇、それも被災者と同じ目線の高さに跪く天皇というのは、例の『民の竈(かまど)』伝説からして天皇のあり方として全く正当な継承であり、また天皇夫妻自身も恐らくはそう考えているのではないでしょうか?


また一方で、あれは夫妻にとって個人的にも、誤解を恐れずに言えば『楽しいこと』でもあるのではないかと思います。


ふだんは立場上、『普通の国民』と語り合う機会なんてほとんどないのが、被災地訪問では初対面の普通の市民と普通に語り合えるチャンスでもあるのですから。


ただし普通の人間では、あそこまではなかなかできない。福島などの被災地でも、天皇夫妻や皇太子夫妻は『別格』です。政治家などはほとんど人の話を聞かないらしいですが、全くの真逆だそうです。


被災者の置かれた複雑な立場や複雑な心情を理解できる人間的な能力の高さは、それも普通の生活と隔絶された立場に置かれ続けている人たちだというのに、信じがたい凄みです」


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■天皇陛下が立ち話で明かした秘話

———今上陛下の「平和の旅」とも呼ばれる、たとえばサイパン訪問・ペリリュー島訪問などをどうご覧になりましたか。


「まず今上天皇ご本人は、父・昭和天皇にもその時代の戦争にも、極めて厳しく批判的です。


客観的に言っても弟の高松宮と近衛文麿の諫言に耳を貸さずに負ける戦争(それも戦争犯罪だらけで著しく非人道的・同じく弟の三笠宮が戦時中から批判していた通り)を継続したことだけでも、昭和天皇は批判を逃れ得ないし、10代の多感な少年として終戦の激変を体験した天皇であれば、とりわけその父について決して全肯定はできない感情を育んでいても、それは自然なことでしょう。


それにもしかしたら、昭和天皇と戦争体制の関わりについて、我々が知り得ない隠された史実すら知っているのかもしれません。


なお僕は偶然にも今上天皇ご夫妻と皇居前の和田倉門噴水公園で立ち話をしたことがありますが、天皇は『行幸通り』を『天皇のパレード通り』と呼び、『歪んだ国家主義の遺物』と評しておられましたし、戦争被害国と日本の外交問題については、『私が行って謝るのがいちばんでしょう。私の父がやってしまった戦争なんですから』と平然とおっしゃってましたよ。


考えてみたら、たまたま立ち話でそう仰ったのは、公的な立場で言えないことだからあえて私的なシチュエーションを使って伝えようとしたのではないか。


そもそも立ち話になったこと自体、天皇陛下ご自身が意図したこととしか思えず、これは機会があれば公言してしまったほうがご本人の期待に沿うことになるとも考えられるので、あえてこの場で公表させていただきます」


 

■歴代屈指の「有徳の天皇」

———最後に平成の御代が終わる感慨・感想をお聞かせください。

「恐らく今上天皇は、天皇として歴代の中でも屈指の優れた『有徳の天皇』であると同時に、だからこそ困った矛盾が生まれてしまったとも言えます。


天皇が国民と国家をつなぐ存在として倫理的な、日本人の人としてあるべき生き方を体現する権威であるとしたら、天皇夫妻はその役割をあまりに完璧にこなして来た結果、どんなに政治家が不道徳でも、日本という国家の道徳的な権威性はなんとなく保たれてしまう。


それは皇太子時代からです。例えば子供の個性を生かした教育を定着させたのは夫妻と現皇太子・徳仁親王の『ナルちゃん憲法』でしたし、日本人の結婚・家族観を変えたのがまず天皇皇后両陛下の恋愛結婚だったのです。


大統領なり総理大臣なりが嘘つきなら、『嘘つきの国だ』と思われます。ヒトラーが総統であればドイツそのものがファナティックなレイシスト国家、となって当然。


ところが平成の日本では、政治家がどんなに無責任でも嘘つきでもデタラメでもなんでも、なにしろ日本とその国民を象徴しているのが、極めて道徳的に完璧で人としてあるべき道を常に考えて実践している天皇皇后両陛下なので、なんとなく国民も安心できてしまう。


そうして30年が過ぎた結果、天皇陛下ばかりが立派で、日本全国が深刻なモラルハザードで病的ですらある状態に陥っている。これは決して天皇皇后両陛下が責められるべきことではないとは言え、結果として平成というのは困った時代になってしまった。


天皇の完璧とも言える倫理的な振る舞いは、結果としてただの『ガス抜き』としてしか機能して来なかったとしたら、それはあまりにも困った、不幸なことかもしれません」

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(取材・文/France10・及川健二

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