故障中のコインロッカーに妙な気配、開けてみて驚き… 「岩手の日常」が異世界すぎる

岩手県のコインロッカーが使用不可になった理由が話題に。博物館は「河童が中に住み着いた」と説明している。

2024/06/12 05:45


 


 

■この博物館、完全にノリノリである

話題のロッカーは博物館正面玄関に設置されたもので、件の張り紙は今年3月1日より掲出されたものと判明。

遠野市立博物館

掲出の経緯について、遠野市立博物館の担当者は「2月下旬に手荷物用の100円ロッカーのメンテナンスをした際、故障で使用不可となっていた9番ロッカー内で、1匹の河童が営巣しているのを職員が発見しました」と振り返る。

遠野市立博物館

同館としても対応に困り退去を促すも、河童は頑として動かない。そこで館長を交えて協議した結果、「展示資料や人間に危害を加える様子はない」と判断し、ひとまず張り紙の注意書きで対応することにしたのだ。

遠野市立博物館

担当者は「自作の炬燵や家具を差し入れる職員もおり、6月現在も周囲に見守られながら、快適な暮らしを続けています」と、そのロッカーライフについて説明しており、河童も博物館も完全にノリノリである。


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■当初は「河童の聖地」ではなかった?

「河童の聖地」として広く知られる遠野だが、地元民からすると河童はどのような存在なのだろうか。

こちらの疑問をめぐり、博物館の担当者は「遠野市公式キャラクターである『カリンちゃん』を筆頭に、市内各所に点在する河童像や、お土産品のラベルなど、河童の目撃情報は枚挙に暇がありません」と説明する。

中には「標識」や「交番」などに擬態する河童もいるが、遠野ではそれが自然に受け入れられているそうで、担当者は「河童がいる風景が当たり前で、河童の居場所がいつも何気なく空けられています」とも語っていた。それならば、ロッカーに河童が住み着いたのも納得である。

遠野市立博物館

しかし、そんな遠野と河童の関係性は、一朝一夕で築き上げたようなものではないという。

担当者は「『遠野物語』は発刊当時は部数が少なく、広く世に回ることはありませんでした。しかし1935年(昭和10年)、佐々木喜善の遺稿を整理し、『遠野物語』119話に『遠野物語拾遺』原稿の299話を加えた『遠野物語 増補版』が出版され、一般読者にも読まれるようになりました」「しかし、この段階では遠野=河童という結びつきは、まだ薄かったようです」と、約90年前の「河童事情」を振り返る。

そんな「遠野の河童界隈」に転機が訪れたのは、1960年(昭和35年)以降のこと。

遠野市立博物館

『遠野物語』が作家・三島由紀夫に評価されたり、思想家・吉本隆明の『共同幻想論』 内で題材にされるなどして評判を呼び、雑誌などで特集が組まれるようになると、『遠野物語』ゆかりの地・遠野を訪ねる人が現れ始める。

そして1975年(昭和50年)の「柳田國男生誕100年」をきっかけに、『遠野物語』ブームが巻き起こったのだ。

遠野市立博物館

遠野市立博物館の担当者は「これらの再評価に呼応する形で市民の間でも『遠野物語』の価値が見直され、1966年(昭和41年)の遠野市施政方針演述では、民俗学や『遠野物語』を活かす施策の必要性が述べられました」「観光ガイドブックには河童淵や河童グッズが紹介されるようになり、官民共に『河童と暮らす街づくり』へと舵を切りました」と、説明している。


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■歴史ある地・遠野

「河童の色」と聞くと、緑色を連想する人が多いだろう。しかし『遠野物語』に収録された河童の話の中には、「遠野の河童は顔が赤い」という記述があり、やはり遠野の河童はひと味違うようだ。

遠野市立博物館

博物館の担当者は「厳しい自然環境に向き合う生活の中で、遠野の人々は救いを求めて様々な神を生み出し、熱心に信仰してきました。また、囲炉裏端での祖父母による語りの中にも色々な『モノ』が潜んでいたことは、現代に残る語り部たちの話からも明らかです」と、遠野の環境と歴史について触れる。

続けて「連綿と受け継がれてきたこの地の暮らしが『遠野物語』を生み、時代を超えて読み継がれることで、遠野の河童達は現代まで生きながらえてきたのではないでしょうか」と、河童に対する敬やと慈愛を感じさせるコメントを寄せてくれた。

そんな遠野市立博物館は、1980年(昭和55年)に日本初の民俗専門の博物館として開館した歴史ある施設。2010年にはリニューアルを行い、国内外を問わず「遠野」という土地に魅せられた来館客が足を運んでいる。

遠野市立博物館

Xの投稿をきっかけに同館に興味を抱いた人々に向け、担当者は「今年の夏季特別展(実施期間:7/19~9/23)は『遠野物語と異界』です。異界とは、日常生活の場や時間の外側にある世界を指し、『遠野物語』や遠野、岩手県内の異界や境の神に関する伝承や信仰資料を中心に展示します。この夏、遠野の異界をそっと覗きに来ませんか」と、呼びかけていた。

「日本の原風景」と名高い遠野の魅力を、ぜひ五感で体験してみてほしい。


【施設詳細】

遠野市立博物館

「遠野市立博物館」

岩手県遠野市東舘町3−9


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■執筆者プロフィール

秋山はじめ:1989年生まれ。『Sirabee』編集部取材担当サブデスク。

新卒入社した三菱電機グループのIT企業で営業職を経験の後、ブラックすぎる編集プロダクションに入社。生と死の狭間で唯一無二のライティングスキルを会得し、退職後は未払い残業代に利息を乗せて回収に成功。以降はSirabee編集部にて、その企画力・機動力を活かして邁進中。

X(旧・ツイッター)を中心にSNSでバズった投稿に関する深掘り取材記事を、年間400件以上担当。ドン・キホーテ、ハードオフに対する造詣が深く、地元・埼玉(浦和)や、蒲田などのローカルネタにも精通。

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(取材・文/Sirabee 編集部・秋山 はじめ

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