『THE W 2023』が「女芸人時代」を裏付ける理由 紅しょうがの優勝
『THE W 2023』は、既にTVで活躍する「女芸人」の活躍と紅しょうがの優勝で、真の笑いの多様性を完成させた。
紅しょうがの優勝となった『女芸人No.1決定戦 THE W 2023』(日本テレビ系)。今大会からは、「女芸人」の多彩さのあるレベルアップが見て取れた。
■凝った構成のネタのやす子
「THE W 2023」は紅しょうがが優勝した。今大会の特徴は、既に知名度のある「女芸人」が多く決勝に残り、大いに活躍したことだろう。
まず、今年の代表的ブレイクタレント・やす子が、きっちりとしたネタを披露している。やす子のネタは視聴者の心をなかなかつかみきれていない面もあるようだが、非常に凝った構成のネタであり、十分にクオリティは高かっただろう。
ネタの見やすさが評価のポイントになりやすい面もあると思われ、ピン芸人はなかなか不利な面があると思われる。
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■ゆりやん VS しらき
ゆりやんレトリィバァは、「エアハムスターショー」という設定から既におかしなネタ。ピン芸の見せ方がいかに難しいのかを物語っているとも言えるだろう。
対する、あぁ~しらきも相変わらずの破天荒なネタ。ピンネタを楽しく見せるには安定感のある設定が必要なものだが、しらきのネタは簡単な設定の上で何度か「妖怪角刈りおばさん」が登場し、暴れ回るもの。
とはいえ、ただ暴れ回っていてもやはり面白いわけではなく、緻密に計算された流れの構成があるのだ。
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■歴史的な一戦
ゆりやんもしらきもレベルの高いピン芸であり、なお破天荒さとしてはしらきの方が上回っていただろう。
ただし、ゆりやんは同大会も『R-1グランプリ』(フジテレビ系)でも優勝しているのに、なおも出場している状態。ゆりやんが勝利判定を受けるには高いハードルが課されているだろう。審査の判定はしらきとなるのも頷ける。
ただし、視聴者投票やSNSの反応もまた、驚くべきことにしらきへの好印象が大きくなっているようだ。女芸人同士の矜持をぶつけ合った、意味ある歴史的な一戦だったと言えるだろう。
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■4人のぼる塾
続く、本来の体制となるぼる塾も、4人での漫才は非常に特殊なもの。視聴者は、見慣れない4人体制のぼる塾を、必ずしも受け止め切れたわけではないようだ。
しかし、きりやはるかもいわゆる飛び道具的なボケであり、元々受け止めるのが簡単とも言えない。そこに4人目のぼる塾・酒寄希望(さかより・のぞみ) が、丁度よい大ボケとして加わることで、いわばボケのグラデーションが完成するのだ。ぼる塾の真のブレイクは4人体制の完成=浸透時だろう。
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■紅しょうが VS エルフ
続くエルフは、ますますコントに磨きをかけ、空気階段から学ぶような設定や展開の厚さと、前回優勝の天才ピアニストから吸収するかのような社会派性を備える。
しかし、彼女らを打ち破り優勝したのは紅しょうがであった。紅しょうがの1本目のコントは、力士のファンというキャラ設定に面白い複雑さを備えつつも、動きも駆使したストレートな笑いでもあるというハイブリッドな奥深さ。
最終決戦のコントも、女性ならではの細やかな笑いやシュールな動きの笑い、構成の渋い笑いを備えつつも、豪快なストレートな笑いどころも外さない構成と言えるだろう。
■「女芸人」の時代
同大会の異種格闘技戦ゆえの大会としてのわかりにくさは否めないが、しかし、よくよく考察すれば、これ以上ない笑いの多様性を体現しているのだ。
同大会は、「女芸人」の戦いという枠組みの結果、真の笑いの多様性に成功している最上質の大会と言っても過言ではないだろう。
また、知名度の高い「女芸人」が同大会で多く活躍していることは、「女芸人」そのもののレベルの高さを裏付けている。同大会とともに「女芸人」はますますレベルアップしていく。
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(文/メディア評論家・宮室 信洋)