「三さけのまち村上」で蔵と地酒を観光資源に ニーズに応えながら伝統を守る『大洋盛』
全国に先駆けて大吟醸を市販化するなど、つねにチャレンジを続けてきた。
村上市は日本海に面した新潟県最北の都市。かつては村上藩の城下町で、今も市街には商人町、武家町の面影が残る。
約70軒の町屋に飾られたひな人形を一斉公開する「町屋の人形さま巡り」は、江戸期からの村上を偲ばせる春の風物詩だ。
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■歴史ある「三さけ」の街
村上といえばやはり筆頭に思い浮かぶのが三面川の鮭だろう。市内を流れる三面川は古くは瀬波川と呼ばれ、秋になると鮭の遡上で知られる。
この貴重な鮭に感謝し、丸ごと食べ尽くす独自の食文化も育まれた。お酒のアテとして名高い「鮭の酒びたし」もそのひとつ。村上はまた地酒の街でもある。
「村上は三さけのまちをアピールしています。「鮭・酒・人情(なさけ)のまち村上」のキャッチフレーズで、観光客誘致に注力しているんですよ」と代表取締役社長の村山智さんは話し始めた。
そうした地元で酒造りに取り組み、観光資源のひとつとしてお役に立てることに感謝しているという。
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■井原西鶴『好色一代女』にも描かれた村上の酒
三面川の伏流水が豊かな村上には、戦前14の造り酒屋があった。その伏流水は磐梯朝日国立公園内朝日連峰の雪解け水が源。クリアな軟水で極上の仕込み水になる。
「村上は古くから酒造りの盛んな土地でした。しかし終戦間際の1945年、管内の14の酒造業者が法令による指導を受けて合併。下越銘醸として新たなスタートをしたのです。そして1950年、社名を大洋酒造に変更。主要銘柄『大洋盛』の誕生となりました」
江戸時代から酒造りが盛んだったことは、井原西鶴の「好色一代女」にも描かれているという。村上のお大尽が京都で郭遊びをした際、京都の酒はまずいからと村上の酒を持ち込んで飲んだという話だとか。
大洋酒造の前身にあたる蔵には、こうした時代からの伝統を持つ蔵も含まれている。