田村淳、著書『母ちゃんのフラフープ』で振り返る 母の死からの一年

思い出を振り返りながら、俺ってどういう人間なんだろう、母ちゃんにこんなところで影響を受けてるな、といったことをポジティブに振り返ることができた。


 

■論文も合わせた構成

田村淳

「研究」というのも、ひとつの重要なキーワードだ。本書の巻末には、淳が慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科を卒業した際の修士論文(抜粋)が添えられている。自伝的な家族の物語と研究論文がひとつになった本は、他に例を見ない。

久仁子さんにがんが見つかったのは2015年。手術を経て再発したのが2017年だった。淳が2019年に大学院に入学した際には、「遺書の動画サービスをつくるためにどういったことを学ばなければいけないのか」という研究テーマはすでに明確に決めていたという。

再発後、抗がん剤や放射線治療、再手術などを選ばなかった久仁子さんだが、腫瘍の状態などは経過観察を続けていた。

「母ちゃんも頑張っているから、自分も遺書動画サービスみたいなものを作ってまず母ちゃんに使ってもらおう」という思いが、芸能活動の傍らで研究に打ち込むモチベーションだった。

しかし、久仁子さんのがんは思いのほか進行が早く、転移したところから骨が弱って骨折し、歩くことができなくなる。病と闘い、死が近づく母と、自身の娘の誕生。「両方のトリガーが引かれて、みんな死って避けがちだけど避けることないのにな」と、研究がフォーカスされていった。


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■調査研究した結果をサービスに

修士論文が完成したのは、今年の2月。本はその後から書き始められたものだが、「本と比べると修士論文のほうが圧倒的にしんどかった」と語る淳。

「僕は大学卒業してないので論文というのがどういうものかわからず、論文用語みたいなものと向き合うのも大変だったし、理論を積み重ねて結果に結びつけるという作業もやったことがなかった。理論を構築する作業を体験できたのは、人生において勉強になったけれど」。

論文には、石戸奈々子教授ら3人の指導教員の名前も。当初想定していた定量的な調査ではなく、「サービスを作る上で必要なデータをインタビューで掘り下げる時期なのではないか」といった教授陣のアドバイスも的確だったという。

そのせいか、巻末に掲載された論文はデータに加えて生の声が豊富で、本文よりは難しいもののわかりやすくまとめられている。 遺言を動画で共有するアプリ『itakoto(イタコト)』は、久仁子さんが亡くなった2020年8月にローンチ。

淳は、「サービスを拡げていくためには僕は研究を続けたほうがいいと思う。研究がいいサービスをつくることに直結している」と話す。

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■母の言葉と「答え合わせの一年」
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