断食月・ラマダン始まる イスラム教徒への影響とは

社会

2016/06/09 05:30

zanskar/iStock/Stock
zanskar/iStock/Stock

イスラム教社会では、今月6日から断食が始まった。これは純粋太陰暦であるヒジュラ暦9月に行われるもので、グレゴリオ暦換算では毎年10日ほど先にずれる。断食月・ラマダンにおけるイスラム教徒は、日中の飲食は控えるのだ。

この風習は現在、日本においても大いに注目されるようになった。


 

■各界にイスラム著名人

日本はここ数年、外国人観光客の受け入れに力を入れている。それと同時にイスラム諸国との事業や投資ビジネスなども活発になり、今や国内の財界イベントでイスラム教徒のビジネスマンを見かけることは珍しくない。

その影響は財界の外にも。たとえばサッカー日本代表監督のヴァヒド・ハリルホジッチ氏はヘルツェゴビナ地方出身のイスラム教徒で、角界にもエジプト出身の大砂嵐という関取がいる。

特に大砂嵐は、高温多湿の時期にも断食を欠かさないという姿勢を明確にしている人物だ。稽古の際にも水を飲まず、代わりにそれを身体にかけているという。

このように、イスラムの断食はもはや「遠い国の習慣」ではなくなっている


関連記事:スンニ派とシーア派、東南アジアのイスラム教徒の違いとは

 

■断食と経済

また、断食は独特な経済効果をもたらす。

国民の大多数がイスラム教徒のインドネシアやマレーシアなどでは、この時期飲食業の「自主規制」が行われる。レストランの昼間営業はおろか、信仰を深める月に相応しくない(と思われる)アルコール提供の飲食店などは営業時間を大幅に短縮してしまう場合も。

もっともクアラルンプールやジャカルタ、バリなどといった外国人が多い大都市は別だが、「異教徒」の少ない中規模以下の都市になるとその賑わいが消える。

これは言い換えれば、実体経済が停滞する期間。それでは国にとってマイナス影響ではないか、と考えてしまうが、ラマダンは終了直後に絶大な経済活性化を促すのである。


■断食後の「死闘」

ラマダン明けの時期は、イスラム教徒にとっては「バカンスの期間」だ。日本人にとっての正月と相通じる。大都市で働く人々は、一斉に故郷へ帰省。そして会社からボーナスが支給されるのも、大抵はこの時期なのだ。

すると当然、ラマダン明けの途端に消費が活発に。人々はボーナスを手に様々な商品を買い込み、それを持って帰る。大型家電製品の売り上げが著しいのも、やはりラマダン明けだという。

大人数が同時に都市部から地方部へ移動するから、鉄道や飛行機などの交通機関のチケットはすぐに売り切れてしまう。だからマイカーのある市民はそれに乗って長時間運転するが、そうでない市民は原付に乗る。

しかし、それは非常に危険な行為だ。インドネシアでは2012年のラマダン明け休暇に、全国で900人以上もの交通事故死者が発生。我が国日本の2015年の交通事故死者は4,117人であり、わずか半月程度で900人の死者というのは極めて深刻だ。

イスラム教の断食という宗教行事は、こうした壮絶な現象をもたらすものでもある。

・合わせて読みたい→スンニ派とシーア派、東南アジアのイスラム教徒の違いとは

(取材・文/しらべぇ編集部・澤田真一


あなたにオススメ