英ドラマ『ダウントン・アビー』をより面白く観るポイント3つ

2016/02/28 10:30

(写真はNHK ONLINEのスクリーンショット)
(写真はNHK ONLINEのスクリーンショット)

イギリスのテレビドラマシリーズ『ダウントン・アビー』が、日本でも人気を集めている。

このドラマは有料放送のスターチャンネルで先行放映されているが、NHKの地上波チャンネルでの放送が非常に見やすい。2016年2月現在は、第4シーズンがNHKで放映されている。

昔ながらの英国屋敷での人間模様、そして人々に容赦なく押し寄せる社会情勢の波。だが視聴者の心を揺さぶる要素に満ちている反面、日本人にとってはかなり複雑に思える当時の時代状況がそこにある。

逆に言えば、20世紀初頭のイギリスを理解すれば『ダウントン・アビー』をより楽しめるということだ。



 

①女性に財産はなかった

この物語は、グランサム伯クローリー家の跡継ぎ騒動から始まる。

クローリー家の当主ロバートには、3人の子供がいる。メアリー、イーディス、シビルの3姉妹だ。だが男子はいない。だからロバートのいとこの息子をメアリーと結婚させ、ダウントンの屋敷と財産を継がせようとしていた。

ところが、ロバートのいとこは息子とともにタイタニック号の悲劇に遭い、命を落としてしまう。第一位の相続人を失ったロバートは、第二位の相続人である青年弁護士のマシューを呼び出して……というストーリーだ。

これでわかるのは、1910年代のイギリスに女性の相続権はなかったということ。それどころか、女性は私有財産を持つことすらも認められなかった。

ヨーロッパの伝統的な考え方では「財産は夫婦のもの」、そしてその財産は長子相続だから、女性の持ち物は家に吸収されてしまうのだ。


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②日本のほうが進んでいた?

また、この頃の女性には選挙権もなかった。30歳以上の女性に選挙権が認められたのは1918年だが、これは第一次世界大戦によって若い男性が大勢戦死し、世代別の票田に格差ができてしまったという理由からだった。

そのような状況だから、たとえば「女性が銀行を設立して大成功を収める」ということはイギリスではまずあり得なかった。

先述の通り、女性の財産は男性配偶者のそれに吸収されるからだ。「女が頭取の銀行だなんて、信用できるか!」と言われるのがオチである。

この時点で賢明な読者の皆様ならば、NHKで放映されている連続テレビ小説『あさが来た』を連想したかもしれない。『あさが来た』の時代は、『ダウントン・アビー』よりもさらに古い。

にもかかわらず、「女が頭取の銀行」が日本ではすでに成立していたのだ。イギリスという国が、きわめて保守的だという事実がよく分かる。


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③現在のイギリスを形作る

また、イギリスは日本よりも遥かに厳格な階級社会である。

だが当時の貴族は、産業構造の変化と世界大戦の影響で一気に弱体化した。貴族の収益は領地からもたらされるが、それが先細りし始めたのが20世紀初頭である。

その中でワーキングクラス(労働者層)の権利を訴える労働党が結党され、議会で勢力を伸ばした。今もイギリスの政界は経営者寄りの保守党と低所得者寄りの労働党にほぼ二分されている。

すなわち、現在のイギリスが形作られたのは『ダウントン・アビー』の時代なのだ。イギリス人からして見れば、この時代こそが日本人にとっての「文明開化」に等しい激動期である。

そうしたことを頭の片隅に入れてドラマを観ると、面白味が増すはずだ。

(文/しらべぇ編集部・澤田真一

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取材イギリスダウントン・アビー
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