あなたなら誰を蘇らせる?映画『帰ってきたヒトラー』原作を読む
今回の「芥川奈於のいまさら文学」では、6月から映画も始まった1冊、『帰ってきたヒトラー』を取り上げたい。多くの人々を魅了し笑わせているが、原作は読書家たちの間では既に大人気の作品であった。
ドイツで130万部以上発行されて、世界38か国程で翻訳されている。賛否両論はあるものの、新書版は誰もが文句を言わない程に売れて、文庫版は更にその上をいこうとしているのだ。
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■「ヒトラー」を蘇らせる?
現代にタイムスリップして蘇った「歴史上もっとも最悪な人物・ヒトラー」が、紆余曲折を繰り返し、最終的にはテレビでお笑い芸人として大ブレイクをしてしまう。
しかし実のところ、それは本物であって、「ヒトラーはどこまでもヒトラー」なのであった。
という、ドイツ発祥の本にしてドイツを笑いと背徳のボーダーラインを行き来させる様なブラックユーモア満載のコメディ作品だ。
■ユーモアで描く「本当に伝えたいこと」
そうは言うものの、この作品について作者が本当に言いたいことは、只の笑いではなく、その逆であるとも捉えられる社会派的ストーリーなのではないだろうか。
それを表現するために、敢えてユーモアという方法に向かったのだろうとおおよそ考えられる。
そして「ヒトラー」という人物を、大虐殺をし、世界中で暴威を働いた単なる戦場の悪人ではなく、1人の人間として観てみると表面ではなく裏の意味を考えていく気持ちが増すだろう。
もし、現代に甦らせたい人物を頭に浮かべた時、あなたなら誰を選ぶだろうか。肉親はもちろんの事、大好きな俳優・歌手や、はたまた愛してやまなかったペットなどかもしれない。
しかしあえて、カクエイやハマコウを呼び戻したら?
先日行われた選挙の結果も、何か大きく変わっていたかもしれないと思うと、それはそれで何故だかワクワクしてしまう自分がいる。
(文/芥川 奈於)