芸能事務所による「移籍制限」に独禁法違反の恐れ 今後の展開も弁護士が解説

日本エンターテイナーライツ協会の共同代表理事を務める河西邦剛弁護士が解説。

河西邦剛弁護士

レイ法律事務所・弁護士の河西邦剛です。

公正取引委員会から「人材と競争政策に関する検討会」についての報告書が先日公開されました。 公取委の報告書はアンケート部分も含めると70ページ前後あり、専門家以外にはなかなか難しい内容になっています。

私のほうで、とくに芸能界に関するところにスポットをあてて解説してみようと思います。



 

■「移籍制限」に独禁法上の問題

報告書においては、「芸能事務所がタレントの移籍制限をすることは独占禁止法違反になる場合がある」と明言しています。

昨今、国民的スターと言われる方々の事務所移籍が話題となり、同時に「芸能界においては移籍制限があるのではないか?」という声が数多くあがりました。

この最も話題になっている「芸能人の移籍制限」ついて公取委が見解を示したことになります。

もともと公取委の検討会が始まった当初は、「特定の業種の事項は検討対象としない」「幅広くフリーランスといわれる人たちの働き方を中心に検討していく」とされていました。

しかし、検討会設立からこの「芸能界における移籍制限」がかなり大きな話題となり、公取委でも国民の声を反映させるために、芸能界においてとくに問題となりやすい移籍制限を取り上げ、「芸能界の移籍制限が独占禁止法の対象になること」を明確化したと言えます。


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■一定の不利益を課す行為は独禁法上の問題が

移籍制限の前段階として、「移籍しようとするタレントに不利益を課す行為」も、独禁法上の問題があるとされました。これはとくに芸能界特有といえます。

例えば「事務所を辞めるつもりなら、もう仕事は振らないよ」となかば干す行為です。公取委が、事務所が干すことを手段として、タレントの移籍を制限しようとする芸能界の実態に着目した結果ということもできるでしょう。

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■「労働者」でも適用除外事由にならない
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