山梨コロナ帰省女性に相次ぐ「ネット私刑」 弁護士が警鐘を鳴らす理由

新型コロナウイルスの陽性が判明後、山梨県から高速バスで東京都に戻った都内在住の20代女性に、誹謗中傷が相次ぐ。これら「私刑」について、弁護士の見解は…

2020/05/08 05:30


 

■リツイートも名誉毀損になる?

個人情報を晒すサイトを作った人については、名誉毀損罪や民法上のプライバシー侵害に当たると指摘。

「名誉棄損の場合、女性について書きこんだ内容が①真実であり、さらに②公共目的、③公益目的でサイトを作った場合、名誉棄損は成立しないということになりますが、現在のネット上の書き込みを見ますと、さらなるコロナ感染防止のためという②公共目的、③公益目的というよりも、軽率な行動を取ってしまった女性をつるし上げるという目的の方が強い気がしますので名誉棄損が成立すると思います」とのこと。

そして、こういった情報をリツイートなどで拡散する行為も「主体的な表現行為」として名誉毀損に当たり得るという。「流れてきた情報を拡散しただけだから…」は言い訳にはならないかもしれない。


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■直接嫌がらせをした場合は…

また、ネットではなく現実で彼女に直接嫌がらせをした場合はどうなるのか。森弁護士は、「無言電話や脅迫電話をする行為は、傷害罪(刑法204条)や脅迫罪(刑法222条)に当たり得ます」と話す。

「また女性の勤務先にもこういった電話や書面を送った場合は業務妨害罪(刑法233条)も考えられます。張り紙などを貼る行為も、女性の情報が具体的に書いてあり、山梨の女性のことであると特定できる場合は名誉棄損罪(刑法230条)に当たります」とのこと。

やっている本人は「正義」と信じていても、その行為が法律違反につながってしまう可能性もあるのだ。


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■「晒し行為」に警鐘

一連の問題について、森弁護士は「女性が、感染の疑いがあった時期や、さらに陽性と判断されてからも色々な場所に足を運んでしまったことは軽率な行動でしょう」としたうえで、「しかし、女性の個人情報や足取りが事細かにネットに書き込まれている状況は、同じように症状や真実を伝えると女性のように個人情報が晒されてしまうのではと不安を覚え、正しい申告を行うことを躊躇してしまう人が出てしまうのではと心配しています」と警鐘を鳴らす。

そして、「今回の書き込みや拡散は明らかに行きすぎです。誰も加害者にも被害者にもならず、一致団結してコロナに打ち勝っていけたらと思います」と話した。

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(取材・文/しらべぇ編集部・二宮 新一 取材協力/レイ法律事務所・森伸恵弁護士)

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