「流行語大賞」とビジネスパーソン 約40年の“世知辛さ”を振り返る

12月1日に大賞が発表される今年の「ユーキャン新語・流行語大賞」。過去約40年を振り返りつつ、大衆なき時代の流行語とそこで描かれる「世知辛さ」を分析する。

2022/11/30 18:00


 

■世知辛さ、格差が如実に…

流行語大賞

2000年代に入り、世知辛さは加速する。第20回を迎えた03年には森永卓郎氏の「年収300万円」がトップテン入りしている。「年収300万円」時代の到来を予言したものだ。翌年の04年、第21回には「自己責任」がやはりトップテン入りしている。ただ、ここでの「自己責任」は格差や貧困のことではなく、イラクでの人質事件の際に使われたものがもとになっている。

一方、05年の第22回では「富裕層」と「ちょいモテオヤジ」がトップテンに入っている。格差を感じる光景だ。同年「クールビズ」もトップテン入りし、当時、環境大臣だった小池百合子氏が受賞している。

そして、06年には山田昌弘氏の「格差社会」が、07年には「ネットカフェ難民」がトップテン入りした。これ以降も、世知辛さ、格差を示す言葉は毎年のようにノミネートされ、ときにトップテン入りしている。


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■新語・流行語について語ることは喜びである

「ユーキャン新語・流行語大賞」は愛されている賞だ、と思う。「これ、本当に流行っているの?」「知らないよ」と言いつつ、毎年、注目され、ついつい話題にしてしまう。別に公的な賞ではない。自由国民社、ユーキャンの努力の賜物である。この賞を続けてくれたことに、私は感謝している。

この賞に対しても、受賞語・ノミネート語についても、批判やツッコミも含めてついつい語りたくなってしまうこと、このこと自体が大事ではないか。その言葉が生まれ、広がり、時に意味が変わっていき、さらには消えていく様子。これを年に1回くらい意識することこそ、時代の変化を読むという行為そのものだ。


 

■問題の可視化にも

中には「これは○○の焼き直しではないか」というものもあるだろう。しかし、「焼き直し」だと気づく行為自体が意味を持つ。今回「世知辛さ」「格差」という切り口で振り返ったが、何度も同じような言葉が登場するということは、問題が続いているということを可視化している。

一方、ニュアンスの違いにより時代の変化を感じることがある。似て非なるもの、非して似たるものに敏感でありたい。平成最後には「#MeToo」がトップテン入りした。世界的なムーブメントになった言葉だ。もっとも、平成の元年から最後まで、この問題が解決されていないということも明らかになっているのだが。

さて、今年はどの語がトップテン入りするのだろう。大賞をとるのだろう。賞の行方も注目だが、語の存在が社会をどう変えるのかにも注目だ。個人的にはインティマシー・コーディネーター、ルッキズム、リスキリングが一般に広がり定着するかに注目している。

新語・流行語がどのように生まれ、広がり、消えていくのか。過去から目線で時代の大きな流れを味わいたい。

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(文/常見陽平

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