米動物園のゴリラ射殺で大論争 大統領候補トランプ氏も議論に参加
「動物園から動物が脱走する」事は、日本でもたまに起きる。だがそれとは逆に「来場客が獣舎の中に入る」ということはあまり聞かない。
そうしたことが最近、アメリカで発生した。オハイオ州シンシナティの動物園で、4歳の男の子がゴリラ舎に転落したのだ。この舎の柵を、男の子が乗り越えた末の出来事。
そして結末は、非常に悲劇的なものとなった。
■ハランべ射殺の正当性
17歳のニシローランドゴリラ「ハランべ」が、転落した男の子に近づいている映像がある。
それを見ると、ハランべが男の子を掴み引きずり回しているのが確認できる。だがその後に動物園が選んだ行動が、全米で激しい議論を呼び起こすこととなった。
ハランべを射殺したのである。
動物園の園長は「このままでは男の子が危険と判断し、やむなく射殺した」とマスコミの取材に応じている。だが市民や動物保護団体、動物学者などから熾烈な非難が舞い込んだ。
動物園の外に、ハランべ射殺を犯罪だとするデモ隊が押し寄せるほどに。
■両親に非難の矛先が
また、両親の監督責任を問う声も大きくなっている。すなわち、男の子がゴリラ舎に転落したことは両親に責任があり、ならば刑事告訴するべきというものだ。
それと同時に、動物園がゴリラを適切に取り扱っていなかったという意見も多くある。特に「なぜ麻酔銃を撃たなかったんだ?」という声が非常に目立つ。
それに対し動物園側は「麻酔銃では間に合わない」と説明。ゴリラの死を悼むと同時に、実弾発砲しなければ男の子が死んでいたとも語る。麻酔は即効性がなく、撃たれた直後はむしろ興奮してしまう可能性が高いからだ。
この論争は、しばらく尾を引くだろうと見られている。
■トランプ氏は動物園を擁護
そんな「ゴリラ論争」に、あの人物も参戦した。大統領選の共和党候補者、ドナルド・トランプ氏である。
「ゴリラ射殺は最良の判断だった。あれ以外に選択肢はなかっただろう」
トランプ氏はそう発言している。
じつはトランプ氏は先日、全米ライフル協会からの支持を取り付けたばかり。同協会は銃所持者の権利保護団体であると同時に、狩猟文化向上の観点から動物保護団体やディズニーと対立していることでも有名だ。
やはりこれは、「銃の国」アメリカならではの出来事である。
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(取材・文/しらべぇ編集部・澤田真一)