拳銃がより安全に?イタズラ防止機器に巨額の資金が集まる
銃社会アメリカでは、「子供の誤射」が大きな問題になっている。幼児が銃にいたずらし、引き金を引いてしまうという事故が多発。
たとえばアメリカの大人気ドラマ『glee』の第4シーズンで、ダウン症の少女ベッキーが拳銃を自宅から持ち出し、校内で暴発させてしまうというエピソードがあった。拳銃をガンロッカーではなくタンスの中にしまっておく家庭が多いためだ。
なぜガンロッカーにしまわないのか。それは「侵入者が来た時、即座に対応できない」からだ。だがそうしたことが、子供の手による誤射や暴発事故の原因になっている。
画像をもっと見る
■夢の拳銃ロック装置
イスラエルのスタートアップ『Zore』は、そのようなアメリカ人の悩みを解消するかもしれない。
同社はこれまでにない斬新なガンロック製品『Zore X』を発表。これはオートマティック拳銃の薬室に外から差し込むタイプのもので、スマートフォンと連動している。
一度銃にセットしてしまえば、ロックがかかり力ずくでは外せない。アプリを通じて解錠項目をタップするか、本体に取り付けられたダイヤルを回すかでロック解除を行える。
なぜZore Xに物理ダイヤルがあるかというと、要は非常事態に備えてのこと。自宅に侵入者が現れた場合、いちいちスマホの画面を開く者などいないし、その場にスマホがあるとも限らない。
ダイヤル解除は非常に簡単で、慣れれば本体を目視する必要がない。銃をテーブルの下に隠しながらの操作もできる。
関連記事:「銃の国」アメリカのガンロッカーが超スタイリッシュ
■銃の「動き」を監視
また、Zore XはBluetooth及びWi-Fi接続にも対応している。これにより、「銃が動いた場合」の持ち主への警告も可能になった。
Zore X装着時に子供が銃を持ち出したら、親のスマホにその旨を通知。薬室のロックだけではない、二重の安全対策である。
この製品がクラウドファンディングサイト『Indiegogo』に出展されると、たちまちのうちに資金が集まった。終了期限まで残り11日の時点で、すでに目標額の460%を達成している。
それだけ、アメリカでは暴発事件が頻発しているという証明でもある。
関連記事:米フロリダ乱射事件を受けて 銃関連株が大幅に高騰中
■南部州の事情
アメリカの旧連合国地域は、銃規制が緩いことで知られている。「旧連合国」とは、19世紀中葉に勃発した南北戦争で合衆国と戦ったアメリカ連合国のこと。フロリダ、ジョージア、ルイジアナ、テキサスなどはいずれも旧連合国である。
この地域の市民は「メキシコからアメリカを死守したのは自分たちだ」という誇りを持っている。ジョン・ウェイン主演の『アラモ』という映画があったが、この作品はまさに「銃を取って立ち上がるアメリカ人」を描いたものだ。そういう意識があるから、南部州の銃所持率は非常に高い。
そのような地域に住む人々にとって、Zore Xは「待望の発明品」である。だからこそ、目標額を大幅に超える資金がIndiegogo内の特設ページに集まったのだ。
こうした面からも、アメリカの現状がよく観察できる。
・合わせて読みたい→「銃の国」アメリカのガンロッカーが超スタイリッシュ
(取材・文/しらべぇ編集部・澤田真一)